自然派ワインの造り手
「ドメーヌ・ラ・ボエム」

2016年9月28日
自然派ワインの造り手 「ドメーヌ・ラ・ボエム」

フランスの真ん中、ヴォルヴィックやヴィッテルというミネラルウォーターの採水地としても有名なオーヴェルニュ地方。ワイン産地としてはやや地味な産地であるがナチュラルワイン好きにとっは外すことの出来ない産地だ。ここに今回ご紹介する「ドメーヌ・ラ・ボエム」はある。

オーナーのパトリック・ブージュ氏はかつてバリバリのIBMのコンピューター技師。休日にワインショップ巡りやワイナリー訪問をするといった単なるワイン愛好家であった。それがある男との出会いで一気にワイン造りに興味を引かれていった。

BioWine_sub1 当時付き合っていた彼女がピエール・ボージェというワイン生産者を紹介してくれた。彼は今や殆ど入手困難になってしまったほどの素晴らしい自然派ワインの造り手。彼と話をしているうちの一気にワイン造りをしたい衝動に駆られる。最初は休日を利用してワイン造りを開始。ピエール・ボージェのアドバイスのもと6年程個人消費や友人に贈る用のワイン造りの経験を積む。そして2003年ついにパトリックはワイナリーとして独立する決意をする。


BioWine_sub2 IBMでバイオの研究システムをつくる優秀なプログラマーだった地位を捨て、午前中だけ仕事をする契約社員に格下げするよう願いを出し、以降、1.5 haの畑を買い、教会の敷地内にある昔のカーヴを借りて2004年に正式にドメーヌ・ラ・ボエムをスタートさせる。


BioWine_sub3 2005年のリリース以来着実にファンを増やし今や割り当て制になるほどの人気ワインに!
SO2無添加のワインだけに時として還元や揮発的要素が感じられることがあるがそれを超えると官能的で魅力的な個性をもったワインを造り上げる。


彼のワイン造りの特徴

醸造方法:ペティアンはペティアンナチュレル、赤はセミマセラシオンカルボニックとトラディショナル。ペティアンナチュレルは、瓶内一次発酵まではメトッド・リュラルと同じだが、最後の澱抜きをシャンパーニュ同様にデゴルジュマンで澱を抜き、目減りした量は同じペティアンで補う。ペティアン・フェスティジャール甘中口は、ブドウを畑で選果後、プレスにかけ、そのままマストを古樽へ。5〜6週間の樽内発酵を経て、残糖が約50 g/Lの時点で瓶詰め。3ヶ月の瓶内醗酵と熟成で泡(ムース)を作り、そして澱抜き(デゴルジュマン)して瓶詰め。

BioWine_sub4赤のセミマセラシオンカルボニックは、ブドウを畑で選果後、房のままファイバータンクへ。1ヶ月のマセラシオン(その間最初の一週間は毎日1回のピジャージュ、その後は毎日軽くルモンタージュを施す)、フリーランとプレスをアッサンブラージュした後、再びファイバータンクに移し13ヶ月の醗酵を経る。通常醗酵が終了後、6ヶ月間ワインを古樽に移しマロラクティック醗酵を終了させる。澱引きをして再度ファイバータンクで3ヶ月ワインを寝かせてから瓶詰め。赤のトラディショナルは、ブドウを畑で選果後除梗破砕し、そのままファイバータンクへ。6週間の発酵と2ヶ月のマセラシオン。ピジャージュは最初の1週間は毎日、その後は4〜5回。ルモンタージュはなし。フリーランとプレスをアッサンブラージュした後、新樽(10%)と古樽(90%)に移し14ヵ月の樽熟成。


酵母:自然酵母

熟成方法:ペティアンは古樽3ヶ月と瓶内3ヶ月、赤は新樽、古樽で14ヵ月(スミ・マセラシオンは古樽6ヶ月、ファイバータンク16ヶ月)

SO2添加:収穫時とビン詰め時に少々。(セミマセラシオンカルボニックの赤はSO2ゼロ)

熟成樽:2〜5年樽と新樽

フィルター:なし

ワインのご紹介

●ペティアン・ナチュレルフェステジャール2015(ロゼ泡)
2015年は、100%ネゴスのブドウで仕込んでいる。ブドウは前年同様オーヴェルニュの最北にあるSaintPurcain sur Sioule村(サン・プルサン・シュル・シウール)の友人から買っている。今回のフェステジャールは、泡立ちがいつもより優しいが、タンニンの収斂味が効いていてワイン全体に締まりがある!アペリティフやフォアグラ、デザートはもちろん、程よいタンニンがあるので、甘辛なソースを使った中華にもよく合いそう!

●VdFザ・ブラン2014(白)
2014年は、雹の被害により収量が50%減...。だが、パトリック曰く、早いうちからブドウが減ったことで、品質的には旨味と酸の凝縮した素晴らしいブドウを取り入れることができたとのこと!(雹の被害がなければ大豊作だったので、そこが非常に残念だ...)ワインはピュアで、白桃のような果実とダシのような透明感のある旨味エキス、緻密なミネラルが上品に溶け込んでいる!開けたてはわずかに火打石のような軽い還元香があり、これが良い意味で官能的な味わいを期待させる!余韻も長く、今飲んでも美味しいが、少し寝かせるととんでもないワインになりそうなポテンシャルを感じる!

●VdFル・ビュス2014(白)
本邦初リリースの白ワイン!シャルドネとトレサリエはフェステジャールと同じオーヴェルニュの北、そしてヴェルメンティーノはラングドックのビオ生産者からブドウを買っている!エチケットのデッサンは、左上段から語呂合わせで、戦車(Char:シャール)、音符のド(Do:ド)、鼻(Nez:ネ)がシャルドネ、中段のミミズ(Ver:ヴェール)、山(Mont:モント)、フランスの俳優ティーノ・ロッシ(Tino:ティーノ)がヴェルメンティーノ、そして、下段の線(Trait:トレ)、汚れている(Sale:サール)、贖罪を課す(Lier:リエ)がトレサリエとなっている!味わいはフレッシュで旨味がしっかりと詰まっていて、鼻に抜ける牡蠣を連想させる潮の風味が何とも食欲をそそる!今は開けたての味わいはクリアだが、次第にマメが出てくる可能性があるためグラス使いよりも、複数人で美味しくテンポ良く飲むのがGOOD!

●VdFヴィオレット2014(赤)
2014年は、スズキによる被害で収量は70%減。前回は100%マセラシオン・カルボニックだったが、今回はスズキの被害がなかったブドウは全房、そして被害の遭ったブドウは除梗し、ミルフィーユのように重ねて仕込んでいる!パトリック自身還元しているワインが好きではないので3回澱引きをかけている。ワインは、最初開けたては、パトリックの意に反して還元が少しあるが、これが飛ぶと赤い果実の香りが全開!ボラティルもいい具合にありとても官能的なワインだ!

●VdFカイウー2014(赤)
2014年は、スズキによる被害で収量は60%減。パトリック曰く、2014年は収穫者を総動員して、ほぼ全滅しかけのブドウを丁寧に選果しワインに仕立てたとのこと!今回は全房のブドウは使わず全て手で除梗!彼曰く、ピノノワールは、ガメイと比べブドウの種が大きく、種が味わいにタンニンと香りに木を連想させるニュアンスを与えている!ワインは、ピュアで透明感がありながらも、カイユー(小石)と言う名にふさわしい洗練されたタンニンとミネラルを感じる!危ういながらもこういう色気のあるワインをつくれるパトリックの才能はすごいとしか言いようがない!

Profile

竹之内 一行(たけのうち かずゆき)

竹之内 一行 (たけのうち かずゆき)

1968年10月生まれ 神奈川県出身。横浜商業高校卒後、レストラン&バーでの修業、
1993年約3週間ヨーロッパへ食べ歩きの旅行をきっかけにワインに興味をもつ。
1996年日本ソムリエ協会ワインアドバイザー修得。その後も都内ワインスクールにてテイスティングの勉強を重ねる。2000年再度渡仏の際に教科書やワインスクールでは、知ることができなかった自然派ワインや地元でしか流通していない真のお宝ワインがあることに興味を持ちはじめ毎年渡仏し現地生産者等と交流を深める。現在、父親が始めた酒販店「エスポアしんかわ」代表。都内等ワイン飲食店にワインの卸や初心者のためのワイン講座等も行っている。

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