産地ブランド米の時代の終焉

2021年1月15日
産地ブランド米の時代の終焉

最近、新品種のお米がやたらと開発され、市場に多く出回るようになりました。直近では秋田県の「サキホコレ」がニューフェイスです。そんな中、苦戦している産地ブランド米があります。そもそも日本人の一人当たりのお米消費量が昭和初期の半分以下になっているのですから、供給過剰に加え、販売不振と価格の下落が止まりません。

例えば、商品カテゴリーのバリエーションが4種類しかなかったとします。そうすると評価対象が四分の一に。需要が一番評価の高い商品に集中するのは当然で、供給のバランスからも価値が上がっていきます。高度成長期、新潟県産のお米、特に魚沼のコシヒカリは生産量よりも多く市場に流通し、偽物が公然と販売されていた事実があります。そのくらいブランド化に成功していたのです。

しかし今では各県で新品種が続々奨励され、嗜好の幅が広がりに加えた選択枠が20にも50にも膨らみました。評価対象が拡大すると、新潟県産米や魚沼産コシヒカリの希少価値は年々下落傾向にあります。

しかし新潟県は、ただ手をこまねいていたわけではありません。偽物が出回っていた時代に危機感を覚えたのか、従来のコシヒカリを改良、BLコシヒカリ(Blast Resistance Lines)と品種改良し、表面上は病気に強い抗体を持つ品種としながらも、他県生産との差別化を図り、DNA検査すれば種子が特定できるようになりました。

ただ、それでも「米処新潟」イメージはだんだんと薄れていきます。現在では「新之助」という新品種を開発し販売促進に力を入れていますが、なかなか苦戦中。美味しいか、と聞かれれば、正直、価格に相当する品質では無いと思いますが、イメージ挽回の急先鋒として売り出している事には間違えないでしょう。

他県に比べ、新潟産と謳うだけで高値取引されていた時代が長かったせいか、生産者の技術レベル、販売企画のアイディアが向上していない印象を受けます。

いまや糖質制限ダイエット(タピオカの方が糖質カロリー過多なのに)や、欧米食化、ファーストフード化によって、お米の需要は一段と減っている中で、供給過多の米穀市場は少なくなったパイの取り合いです。

コロナの影響によって一段と外食産業は冷え込み、お米の消費はさらに影響を受けています。
低炭素社会に向けた取り組みや、ネオニコチノイドといった農薬を使わない、自然環境配慮型の農業に一番適しているのが稲作です。 この辺の情報発信を上手くマーケットに反映しない限り、ブランド産地の巻き返しはかなり難しい、そんな風に感じています。

Profile

金井 一浩(かない かずひろ)

金井一浩(かないかずひろ)

吉祥寺生まれ吉祥寺育ち。
高校卒業後、大学に進学せず1990年証券会社へ入社しバブル崩壊を肌で経験。阪神淡路大震災の時に感じた利益優先のマーケットに疑問を感じこの年に退社。フリーター業で生計を立てるも、規制緩和の時代変化に対応できていない実家の米屋に危機感を覚え家業を継ぐことに。その後、お客さんに目が向いていないお米業界の古い体質や流通から脱するために1年半の通信教育を経て業界で一番難しいといされる「お米アドバイザー」を取得、後に第1回環境社会検定試験に合格し、フード&ヘルス研究所主催の小児食生活アドバイザーに認定される。単に美味しさだけではなく環境や健康も考えた生活の中のお米選びをお客様に提案し提供している。現在では本業の他に業界の若い世代が集まる「和日米会」の会長を務め、「フリースクール上田学園」にて日本食文化の講師を担当する。

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