なぜお米屋さんは廃業していくのか?

2018年5月15日
なぜお米屋さんは廃業していくのか?

パン屋さんがオープンした。美容室に変わった。吉祥寺では当たり前の光景ですがお米屋さんがオープンした!という話は聞いた事がありません。これは吉祥寺に限った話ではなく日本全国どこでも同じ現象だと思います。逆にここのお米屋さん店閉めたね、という話のほうが多いように思います。

なぜお米屋さんは減少していくのか、ただ単純に儲からない!からだと思います。
飲食店に納品するお米の平均単価を例に上げますと税別200円代から350円が主流です。いまお米の末端仕入れ価格が1等米(一番綺麗な米粒)で1俵(60kg玄米)約14,000円税別です。これを白米に精米すると約53.5㎏(残りヌカ)になります。よって1㎏の単価計算をすると261円(税別)です。これに必要経費(精米動力代、袋代、人件費、配送経費などなど)約60円を足して321円、これが原価となります。これに利益を2割乗せたとして税別385円、5㎏に換算すると1925円(税別)。よってこれより安い29年産米を納品されている業者は薄利どころではない真っ赤な火の車状態になります。よくディスカウントストアで売られている粒がそろっていない白っぽいお米がたくさん混ざっているボロボロのお米を見ればわかりますが、クズ米を混ぜたりとかとか1等米以下の粗悪品を扱うしかなくなるのです。

では、なぜお米は利益率が低く設定されるのか。これは戦後の食糧管理法にあった政府米の統一販売価格による一律利益率25%(たしか)という制度が尾を引いています。ただ、この法律は戦後の食糧難を改善する目的で半ば配給に近い形で出来ました。政府がお米の需給を管理し販売者には販売権利を取得する義務を課したのです。それには特定数以上の地域住民による推薦状が必要で、顔が広く地域の信用がある地主さんが販売権利を取りやすかったという背景があります。しかしその食糧管理法も平成7年に廃止、一時は登録制となりましたが今では完全に廃止され誰でも自由に仕入れ販売できるようになっています。よって仕入れ価格も利益率設定も完全自由になったのですが、日本人のお米総消費量が年々減っている状況下では需給バランスが完全に崩れ供給過多によるデフレスパイラルから抜け出せなくなっているのです。

そんな過酷なデフレ状態なのに最近まで自由競争がなかった米穀業界はいまだに権利商売の体質から脱却できない事例があります。日本米穀小売商業組合が運営するお米マイスター制度です。これは食管法のときから引き継がれている小売店組合が言わば存続のために作った制度です。
それを裏付けるシステムが組合員として登録していないお米屋さん、ないしお米関連に従事する者でもお米マイスターの受講資格がないという事です。昔からの癒着で組合費を払っている人だけが恩恵を受けられますから、弊社のような地主でもなく組合にも入っていない米穀店は受講できません、まして一般からの受講は論外。もし一般の方が受講出来たら5つ星マイスターの評価格が地に落ちる事目に見えています。なぜなら合格率が自動車運転免許試験と同レベルだとバレテしまうからです。

私事で恐縮ですが、昨年、農林水産省・日本経済新聞社・日本政策金融公庫の後援団体、公益財団法人食品流通構造改善促進機構主催による第27回優良経営食料品小売店等表彰事業に応募し、農林水産大臣賞を受賞いたしました。審査は結構厳密で過去3年間の財務諸表と主な経営情報を提出するのが1次審査。それをクリアすると2次審査に進み中小企業診断士の先生に問診を受けます。他にお肉屋さん、酒屋さんが受賞されていましたが各々知恵を絞り独創的な経営スタイルを確立していました。

組合員でもない、お米マイスターでもない小規模な弊社がなぜ全国小売の中から入賞できたのか少々戸惑いがありましたが、よくよく考えてみると単純に業界にしがらみを持たず既得権も存在していない、不動産の不労所得もない純然たる米穀店経営が確立できているからだと解釈できました。ちなみにこんなこと書けるのもその立場のおかげかと思います。

どの業界でも発展には古い体質の既得権は大きな障壁になります。慣例に風穴を開けるためにも組合は保身に走らずマイスター制度を一般受講可能にすることで学びたい人の垣根が無くなり広くお米の知識を得られる人が増えるでしょう。お米に対しての認識力が高い一般の人が増えれば業界も意識向上しなければならなくなり、やがて日本の農業を発展させる社会貢献活動につながっていきます。そして新規にお米業界へ参入する人を増やすきっかけになるはずです。その折りにはしっかり利益が出せる経営と競争原理により日本の農業を支える魅力的な米穀店営業が実現で来るかと思います。

Profile

金井 一浩(かない かずひろ)

金井一浩(かないかずひろ)

吉祥寺生まれ吉祥寺育ち。
高校卒業後、大学に進学せず1990年証券会社へ入社しバブル崩壊を肌で経験。阪神淡路大震災の時に感じた利益優先のマーケットに疑問を感じこの年に退社。フリーター業で生計を立てるも、規制緩和の時代変化に対応できていない実家の米屋に危機感を覚え家業を継ぐことに。その後、お客さんに目が向いていないお米業界の古い体質や流通から脱するために1年半の通信教育を経て業界で一番難しいといされる「お米アドバイザー」を取得、後に第1回環境社会検定試験に合格し、フード&ヘルス研究所主催の小児食生活アドバイザーに認定される。単に美味しさだけではなく環境や健康も考えた生活の中のお米選びをお客様に提案し提供している。現在では本業の他に業界の若い世代が集まる「和日米会」の会長を務め、「フリースクール上田学園」にて日本食文化の講師を担当する。

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