The Dead Bird

2018年4月24日
「The Dead Bird」

あれは小学生の頃だ
友だち数人と家に帰っている途中
いつものように寄り道をした公園
建物の裏の日陰の草むらで
鴨を見つけた
鴨は静かに横たわっていた
虫の死骸や
枯れた花などは目にしていたが
もしかしたら生き物の死に初めて触れたのはあのときだったかもしれない
誰かが
このまま放っておくのは可哀想だ
と言った
誰かが
埋めてやらなければならない
と言った
誰かが
ここでは寂しいと
また誰かが
うちは犬がいるから駄目だ
と言った
(ような記憶がある)
何だかんだそんな相談をしたのち
結局
森の中に住んでいた僕の家の庭に埋めよう
ということになった
学校から歩いて1時間
僕の家は森の中にあり
学校に通うどの生徒よりも飛び抜けて遠かった
一緒にいたみんなの家を次々に通り越し
あるものはランドセルだけ置いたり
ちょっと遅くなるー!
と玄関で叫んだりして
みんな交代でズッシリと重たい鴨を抱きながら歩いた
鴨の亡き骸をかかえて突如現れた少年たちを見て
当然のごとく
母はぎょっとしたそうだ
叫びたいのを堪えながら
埋めるのは父が帰って来てからにしようと
怖いので目に入らないようそっとカーテンの陰に鴨を安置し
父の帰りを待ったという
冬場で土が凍っていたのだろうか
その辺りは覚えていない
その後鴨は帰宅した父の手により無事家の裏に掘った穴に埋められ
上に石を置き
ちゃんと幼稚園の頃に教わったお祈りを唱えられ
多分今も実家の土の中に眠っている

「The Dead Bird」
マーガレット・ワイズブラウン 作
レミィ・シャーリップ 絵

この本を読んだとき
幼い頃のその出来事を思い出した
お話は僕の体験とほぼ一緒
野原で遊んでいた子どもたちが鳥をみつける
(凧を持っているので、凧上げをしていたことがわかる。日本語版では凧上げをしている絵が表紙になっている)
小さな鼓動がとまり
やわらかい体が冷たくなることでその鳥の死を知り
静かな森の中に埋める
そして大人がしているのと同じように
花を添え
歌を歌い
そして最後のページ
再び遊びに戻る
ワイズブラウンの詩的な文章に
シャーリップの平らで静かな絵が重なり
子どもと死との出会いを騒々しくなく描いた
とても美しい作品だ
鳥は死んでいるが
空は青く澄んで広く
森は深く静かで少し涼しい
子どもたちは泣くわけではなく
しっかりその出来事と向き合っている
何よりもよいなと思うのは
花を添える順番を待つ間何か談笑している男の子や
鳥を埋葬した後に再び笑顔で遊びに戻る子どもたちが描かれていること
この漫画的、ドラマ的でない感覚というか
まっすぐ子どもを見つめた者にしか知り得ない
子どもたちの真の姿のようなものをしっかりと描いているところに
流石ワイズブラウン
流石シャーリップ
と唸ってしまう

森は静かで
湿気があり
何だか神聖で
それ故に子どもながら
この鳥を埋めるのは森がよいと考える
きっとあの時の僕らも
そう思ったのでしょう
そして
鳥をみつけた以上
それを無視して放っておくことは決して出来なかった僕らとこの子どもたちに
人としての本質を感じるのです
先日帰省した際
鴨が眠るあたり
リスが食べ散らかした胡桃の殻の間から小さな赤いカッコソウが咲いていました

「The Dead Bird」
吉祥寺の絵本の古本屋より
フランソワ・バチスト氏がご紹介致しました。
次回は6月です!

Profile

冨樫 チト(とがし ちと)

冨樫 チト (とがし ちと)

本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。

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