わたしのワンピース

2017年9月21日
「わたしのワンピース」

噂にはきいていたが
どうやら
読むことと
読んでもらうことは
全然違うらしい

自分で足をマッサージするのと
誰かに足をマッサージしてもらうのが全く違うように
するとされるとでは全然違う気持ちよさがある

ということを最近改めて実感している
何を今さら...
と思われるかもしれないが
いやいや
絵本を読んでもらえる機会なんて
絵本屋をやっている僕ですらそうはないのですよ

そりゃ当然仕事柄
毎日毎日多くの絵本に接していて
暇なときはお店の絵本を読むし
買い取った本仕入れた本は
書き込みやよごれのチェックも兼ね
全て一度読みます
これだけ日々絵本と触れていて
それこそナマハゲのように
「面白い本ねぇが〜面白い本ねぇが〜」と365日ウロウロ探していても
全くどこに隠れていたのか
まだまだ知らない名作と出会ったりするのです
(最近だと「よじはんよじはん」「あかべこのおはなし」の2作は素晴らしかった)
でもそれらは全て読む絵本で
読んでもらう絵本では
ないのです

ところが
ところがです

家に帰ると生後3カ月のかわいいかわいいかわいいかわいい娘がいて
お風呂から上がって寝るまでのほわっとした時間に
膝の上で妻に絵本を読んでもらっているのです
「いないないばあ」「ちびくろさんぼ」「しっぽがぴん」
レパートリーは色々だけれど
昨日はこれ
妻が実家から持って来た年季の入った

「わたしのワンピース」
西巻茅子
こぐま社

これを昨日娘の背後からのぞいてみたのです

まっしろなきれ
ふわふわって
そらから おちてきた

ミシン カタカタ
わたしの ワンピースを つくろうっと
ミシン カタカタ ミシン カタカタ

面白い
面白いぞ
「わたしのワンピース」
普段読むときにどうしても集中してしまう「文字」から今
自由になった視線がページいっぱいに広がった絵
そのあちらこちらにあるしかけに向かってゆく
普段気付かなかったものにふと気付く
へぇ影の色は緑なんだ
いや
よく見ると緑と黄色だ

次のページの影は青と緑だ
端っこに一羽の鳥
まだお話の中には出て来ていない
ページがめくられると...
鳥が沢山やってくる!
麦の穂発見
ということは...
やっぱり次のページは一面の麦畑
星空のページの前には
こっそり1つだけ星が隠れている
そうやってページとページの繋がりをスムースにしているんだ
(まるでDJ KIYOやDJ MUROのミックステープ!質のよいDJのように場面と場面を繋いでいるんだ)
めくる楽しみ
ページに手がかかるとドキドキする
いないいないばあの
いないいないーのときの気持ち
そして絵を眺めている空っぽの頭の中に
耳のほうから心地よく文字が音として入ってくる
「ラララン ロロロン」
この本の特徴の軽やかなリズム
読んでいるほうも楽しそう
何かをしてもらう
ということの気持ちよさ
満足感に浸る時間
そしてパタンと絵本を閉じる音
(あの音が好きです)

読み聞かせの大切さなんて
耳のタコが墨をスプリンクラーよろしく撒き散らすくらい聞いているけれど
知識で知っているのと実際に体験して気付くのは全然違う

絵本は当然子どもに向けられたものだし
子どもの娯楽だけれど
だからと言って絵本なんて
と高を括っている大人のみなさん
一度読み聞かせてもらいなさい
もしくは読み聞かせの後ろにこっそり混ざってごらんなさい
「わたしのワンピース」なんて1969年生まれ
現在48歳!
48年間子どもと正面から対峙してきて
目まぐるしく変わる時代の中で未だに子どもたちを満足させ続ける本物の力
時代
世代を越える力
何が本物なのか
何がよい絵本なのか
きっと発見できるはずです
普及の名作
みんな大好き
「わたしのワンピース」
フランソワ・バチスト氏がご紹介いたしました

Profile

冨樫 チト(とがし ちと)

冨樫 チト (とがし ちと)

本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。

  • 競馬で牝馬をひんばと読みますが牡馬は?

    by 中村 滋 on 2017年12月 5日
    来年、広辞苑が10年ぶりの改訂とかで、「スマホ」とか「萌え」とかが載るということですが、これをニュースにするというのは、なんか時代とズレてませんか。辞典編集部の担当役員をした経験から言うと、辞典編集
  • ぴちぴちカイサとクリスマスのひみつ

    by 冨樫 チト on 2017年11月30日
    さあ今年もホリデーシーズンがやってきたぼんやりと外の雨を眺める日々も終わり年に一度の絵本屋の張り切り時一年間ためた200冊あまりのクリスマスの絵本を一度に放流する今年はなかなか楽しい絵本を捕獲
  • 「1968年」無数の問いの噴出の時代

    by 石黒 健治 on 2017年11月22日
    「1968年」無数の問いの噴出の時代」展が、国立歴史民俗博物館で開催されています。無数の問いとは何でしょうか。誰が何を、だれに問うのか、問いには答えがあったのか?第1の問いは、ベトナム戦争です。1
  • 美味しさの秘訣は計量

    by 金井 一浩 on 2017年11月15日
    「同じお米なのになぜ?毎回違う炊き上がり!」という経験ありませんか? ごくまれに、「前回のお米はベチャっと炊き上がり美味しくなかった」「今回のお米は粘りがすくなく感じた」このような問い合わせがあり
  • 2017年の自然派ボージョレ・ヌーヴォー...

    by 竹之内 一行 on 2017年11月13日
    2017年の作柄 6、7、8月の3か月は殆ど雨が降らなかった。 降ったのは雹だけ。しかも2度に渡って降った。 3か月も雨が降らなかったので、葡萄が熟す大切な8月は水不足で葡萄がシワシワになって
  • 街は騒音と雑音に満ちていると気づく道具

    by 中村 滋 on 2017年11月 6日
    夜道を歩いていて聴こえる虫の音も、気温のせいか小さくなっています。そんな虫や鳥、風の音は心地良い音色ですが、電車やトラック、バスのロードノイズ、バイクの排気音は騒音です。街はなんと雑音に満ちているこ
  • おおきなくまがいいました

    by 冨樫 チト on 2017年10月27日
    週に一度仕事で横浜に行く吉祥寺から新宿へ湘南新宿ラインに乗り換え横浜へ1時間ほどの電車の旅だボックス席に乗りながら本を読んだり携帯をいじったり周りもほぼ同じように自分の世界を過ごしている新聞であ
  • 自然派ワインの造り手「オリヴィエ・クザン...

    by 竹之内 一行 on 2017年10月24日
    フランスのロワール地方の中にアンジュ・ソミュール地区とういワイン生産地がある。 ここでは赤はカベルネ・フラン、ガメイ、グロロ。白はシュナンブランを主に栽培されている。一般的には軽やかで安いワインが
  • 風景と調和すれば、存在が許される――安部...

    by 石黒 健治 on 2017年10月18日
     [美しい山。川を流れる石ころ。砂浜に打ち上がる流木。それらの形はとうてい人間には作り得ない必然性を持つ。]  安部大雅のパンフレットは、こんな詩的な文章から始まる。続けて、[我々人間がどこまで
  • 有機栽培は無農薬栽培なの!?

    by 金井 一浩 on 2017年10月15日
    最近、お米以外でも野菜や果樹、輸入品までJAS有機栽培の農産物を見かけます。ファーマーズマーケットのように生産者の直売イベントでは栽培表記が必須ですよね。 そこでJAS有機栽培、無農薬栽培、減農
  • あらゆる臭いが瞬時に消える不思議な液体

    by 中村 滋 on 2017年10月 4日
    体臭をやたら気にするのはどうかと思いますが、悪臭というのはいっぱいあります。靴箱、クローゼット、トイレ、生ゴミ、焼き魚あとの台所、エアコン、寝室、ペット、車の中などなど。 消臭といえばファブリーズ
  • 自然派ワインの造り手「ミッシェル・ガイエ...

    by 竹之内 一行 on 2017年9月26日
    自然派ワインファンが大注目の産地の一つにジュラ地方がある。 フランスとスイスの国境に近い山岳地帯にありコンテやモン・ドールなど素晴らしいチーズの名産地でもある。この地は冷涼な気候とこの地独特の葡
  • わたしのワンピース

    by 冨樫 チト on 2017年9月21日
    噂にはきいていたがどうやら読むことと読んでもらうことは全然違うらしい自分で足をマッサージするのと誰かに足をマッサージしてもらうのが全く違うようにするとされるとでは全然違う気持ちよさがあるという
  • たいまつを放さない人の手をたいまつが焼く

    by 石黒 健治 on 2017年9月19日
     9月最初の月曜日、フォトコンテストの審査会に出席しました。仏教伝道協会の「2019年一日一訓カレンダー」を飾る写真の審査です。1740枚の応募の中から第1次審査を通過した385枚の写真が、大
  • 新米の価格が高騰

    by 金井 一浩 on 2017年9月15日
    いま29年産米の収穫期を迎えております。そして今年の米価は作柄に関係なく産地品種によっては2年前に比べ2割以上も高騰しています。もともとお米の価格は味に比例せず、新潟県魚沼産のように有名産地や有
  • ソフトドリンクも自分好みの濃さにできます

    by 中村 滋 on 2017年9月 6日
    ウイスキーや焼酎は、水割りにしろ炭酸割りにしろ自分好みの濃さにできます。ソフトドリンクも同じようにしたいと思いますが、カルピス以外あまりみたことがありません。出来合いのペットボトル炭酸飲料は甘す
  • ぼくからみると

    by 冨樫 チト on 2017年8月30日
    お店の端っこのほうに常にあるけれどとくに光が当たることもなく手に取られ旅立っていくこともほぼない本たちのコーナーがある田島征三さんの「猫は生きている」や米倉斉加年さんの「おとなになれなかった弟たち
  • 自然派ワインの造り手「ガングランジェ」

    by 竹之内 一行 on 2017年8月24日
    フランス・パリから約500km、ドイツとの国境付近に位置するアルザス地方。この地は17世紀から19世紀にかけてフランスとドイツが領有権争いを続けていたため、フランスに属したりドイツに属したりを繰り
  • ヨコハマ トリエンナーレ2017とヴェネ...

    by 石黒 健治 on 2017年8月17日
     3年に1度、世界各国からアーチストを招待して開かれる現代アートの国際展「ヨコハマ トリエンナーレ2017」が開幕した。タイトルは『島と星座とガラパゴス』―《「接続」と「孤立」をテーマに、世界
  • 農業は儲かる!

    by 金井 一浩 on 2017年8月15日
    先日、和日米会(わかこめかい)というお米に携わる人で構成されている会の定例会に参加してきました。簡単にこの会を紹介しますと、「和」は日本の心、「日」は日常、「米」は日本食文の礎という理念の下、各々
1

Homeに戻る