くまくんのじてんしゃ

2017年7月24日
「くまくんのじてんしゃ」

「くまくんのじてんしゃ」
エミリー・ウォレン・マクラウド 文
デイビッド・マクフェイル 絵
アリス館

読書感想文の季節ですね
苦手だった方
たくさんいるでしょう
何せまず感動しなきゃなりませんから
そして僕も私もこの○○のように○○な生き方を...
そんなこと...考えながら...本なんて...
正直な話
僕が本を読んだ感想はあー面白かった!
それにつきます
娯楽ですから
この本もそう
あー面白い
最高に面白い
でもなんで面白かったんだろ
ちょっと考えてみます
そのためには
よく読まなくてはなりませぬ
ではスタート

まずは本のもつオーラです
手にとられなくては何も始まらない
あまたある本の中から
何故この本にしたのか
その目に見えないチカラ
まるで磁石
一見平らに見えるところに置いたボール
心がコロコロその本に向かって転がって行く
その理由は何か
背表紙「くまくんのじてんしゃ」
黒い文字
うん
よいフォントです
表紙
わぁばかでかいくま!(きたない言葉使います、あしからず)
それに比べて見て!ちいちゃな自転車
よく見たら補助輪付き!!
なのに見て!この得意げなこの表情
右手の中指のくいっと握りしめた感じ
まるで赤ちゃんみたい
足の裏はペダルにフモッと接して
よく見たらちょっと左に曲がろうとしているのかしら
毛が風に揺れています
さぞかしスピードが出ていることでしょう
絵が動いています
自転車がちゃんと前に進んでいます
例えば雨のシーンだったら
描かれた雨はちゃんと降っているか
紙の上で停止してしまっていないか
空の雲はゆっくり流れているか
そこが大切
(「優しさごっこ」の中で今江祥智さんも言っていました)
合格
これはきっと面白い本に違いありません
いざページを開いてみましょう
おや
だいぶシミがありますね
なかなか古い本のようです
古い紙の匂い
時間の匂い
中扉
家が一軒
窓からは子ども
子どもの手にはぬいぐるみのくま(実はこれがくまくん)
目線の先にはガレージが
補助輪付きの自転車が二台
ガレージにはノコギリとかトンカチ

カレンダーもあります
カレンダーの写真は...
遠くて見えません
(後のページに出てきます。水着の女性でした)
次のページ
ちょっと難しいことが書いてありますよ
どれどれ...
ほらやっぱり1976年2月28日初版
本にだって誕生日はあるのです
この本は41歳です
この香りは41年の時の香り
さあいよいよ本編へ!

ただ本を読む
ということと
感想文を書くときに本を読むこと
結構違うかもしれません
僕のもう一足の草鞋はダンサーなのですが
いわゆる普通に音楽を聴くことと
われわれダンサーが音を聴くことはかなり違います
人に説明するときによく例えるのはカレーの話
カレーをカレーとしてわしゃわしゃ食べるのか
お、茄子が入っている
お肉は豚肉だな
隠し味にナンプラーが入っているぞ
これがダンサーの音を聴く感覚
ドラムパターン、ベース、ホーン
ボーカルの質感

本を読むも同じ
このカレーを食べる感覚で本を読んでみたら
その時点でやっと我々は
字の読めない子どもが絵本を「読む」ときの眼差しに並ぶのです

よく小さい頃の絵本の記憶を紐解くと
ストーリーや結末は殆ど覚えていないものの
テーブルの上に並んでいた美味しそうな料理や
画面の端っこに飛んでいたトンボのことは鮮明に記憶にあったりします
それはよい本の1つの条件
料理から湯気が出ていた証拠
トンボが飛んでいた証拠
この本も
一枚の絵がちゃんとものがたりになっていて
細部まで丁寧に描き込まれていて
次のページをめくるワクワクもある
表紙を見てわかるとおり
毛の一本一本
口角
指の曲がり具合
いずれも隙がなく
絵だけでもどんな性格のくまだかちゃんと伝わる 素晴らしい本です

この「くまくんのじてんしゃ」
ストーリーはくまくんが男の子と一緒に自転車を漕いでいて
道を渡るときによく見ないとどうなるか
坂を下りるときいいきになるとどうなっちゃうか
(ドンガラガッシャーン)
気をつけて運転しないとこうなる
というのをことごとく体現してくれるのですが
じゃあ自転車には気をつけて乗りましょうではない
なんて愉快に転ぶんだ
なんて得意げに自転車に乗るんだ
小さなサドルになんて大きなおしりが乗っているんだ
ってところが最高に楽しくて
出来ることならくまのふかふかさ
自慢気な表情
そんなところを感想文にくまなく書いて欲しい
間違っても
僕もこれからはちゃんと右見て左見て交通ルールを守りながら自転車に乗りたいと思います。
なんて書かないで欲しい
最高に愉快で痛快で
くまのおしりが最高に可愛い
そんな一冊です
くまの絵本ばかり描いているデイビッド・マクフェイル
「くまくんのじてんしゃ」
フランソワ・バチスト氏がご紹介いたしました

Profile

冨樫 チト(とがし ちと)

冨樫 チト (とがし ちと)

本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。

  • 競馬で牝馬をひんばと読みますが牡馬は?

    by 中村 滋 on 2017年12月 5日
    来年、広辞苑が10年ぶりの改訂とかで、「スマホ」とか「萌え」とかが載るということですが、これをニュースにするというのは、なんか時代とズレてませんか。辞典編集部の担当役員をした経験から言うと、辞典編集
  • ぴちぴちカイサとクリスマスのひみつ

    by 冨樫 チト on 2017年11月30日
    さあ今年もホリデーシーズンがやってきたぼんやりと外の雨を眺める日々も終わり年に一度の絵本屋の張り切り時一年間ためた200冊あまりのクリスマスの絵本を一度に放流する今年はなかなか楽しい絵本を捕獲
  • 「1968年」無数の問いの噴出の時代

    by 石黒 健治 on 2017年11月22日
    「1968年」無数の問いの噴出の時代」展が、国立歴史民俗博物館で開催されています。無数の問いとは何でしょうか。誰が何を、だれに問うのか、問いには答えがあったのか?第1の問いは、ベトナム戦争です。1
  • 美味しさの秘訣は計量

    by 金井 一浩 on 2017年11月15日
    「同じお米なのになぜ?毎回違う炊き上がり!」という経験ありませんか? ごくまれに、「前回のお米はベチャっと炊き上がり美味しくなかった」「今回のお米は粘りがすくなく感じた」このような問い合わせがあり
  • 2017年の自然派ボージョレ・ヌーヴォー...

    by 竹之内 一行 on 2017年11月13日
    2017年の作柄 6、7、8月の3か月は殆ど雨が降らなかった。 降ったのは雹だけ。しかも2度に渡って降った。 3か月も雨が降らなかったので、葡萄が熟す大切な8月は水不足で葡萄がシワシワになって
  • 街は騒音と雑音に満ちていると気づく道具

    by 中村 滋 on 2017年11月 6日
    夜道を歩いていて聴こえる虫の音も、気温のせいか小さくなっています。そんな虫や鳥、風の音は心地良い音色ですが、電車やトラック、バスのロードノイズ、バイクの排気音は騒音です。街はなんと雑音に満ちているこ
  • おおきなくまがいいました

    by 冨樫 チト on 2017年10月27日
    週に一度仕事で横浜に行く吉祥寺から新宿へ湘南新宿ラインに乗り換え横浜へ1時間ほどの電車の旅だボックス席に乗りながら本を読んだり携帯をいじったり周りもほぼ同じように自分の世界を過ごしている新聞であ
  • 自然派ワインの造り手「オリヴィエ・クザン...

    by 竹之内 一行 on 2017年10月24日
    フランスのロワール地方の中にアンジュ・ソミュール地区とういワイン生産地がある。 ここでは赤はカベルネ・フラン、ガメイ、グロロ。白はシュナンブランを主に栽培されている。一般的には軽やかで安いワインが
  • 風景と調和すれば、存在が許される――安部...

    by 石黒 健治 on 2017年10月18日
     [美しい山。川を流れる石ころ。砂浜に打ち上がる流木。それらの形はとうてい人間には作り得ない必然性を持つ。]  安部大雅のパンフレットは、こんな詩的な文章から始まる。続けて、[我々人間がどこまで
  • 有機栽培は無農薬栽培なの!?

    by 金井 一浩 on 2017年10月15日
    最近、お米以外でも野菜や果樹、輸入品までJAS有機栽培の農産物を見かけます。ファーマーズマーケットのように生産者の直売イベントでは栽培表記が必須ですよね。 そこでJAS有機栽培、無農薬栽培、減農
  • あらゆる臭いが瞬時に消える不思議な液体

    by 中村 滋 on 2017年10月 4日
    体臭をやたら気にするのはどうかと思いますが、悪臭というのはいっぱいあります。靴箱、クローゼット、トイレ、生ゴミ、焼き魚あとの台所、エアコン、寝室、ペット、車の中などなど。 消臭といえばファブリーズ
  • 自然派ワインの造り手「ミッシェル・ガイエ...

    by 竹之内 一行 on 2017年9月26日
    自然派ワインファンが大注目の産地の一つにジュラ地方がある。 フランスとスイスの国境に近い山岳地帯にありコンテやモン・ドールなど素晴らしいチーズの名産地でもある。この地は冷涼な気候とこの地独特の葡
  • わたしのワンピース

    by 冨樫 チト on 2017年9月21日
    噂にはきいていたがどうやら読むことと読んでもらうことは全然違うらしい自分で足をマッサージするのと誰かに足をマッサージしてもらうのが全く違うようにするとされるとでは全然違う気持ちよさがあるという
  • たいまつを放さない人の手をたいまつが焼く

    by 石黒 健治 on 2017年9月19日
     9月最初の月曜日、フォトコンテストの審査会に出席しました。仏教伝道協会の「2019年一日一訓カレンダー」を飾る写真の審査です。1740枚の応募の中から第1次審査を通過した385枚の写真が、大
  • 新米の価格が高騰

    by 金井 一浩 on 2017年9月15日
    いま29年産米の収穫期を迎えております。そして今年の米価は作柄に関係なく産地品種によっては2年前に比べ2割以上も高騰しています。もともとお米の価格は味に比例せず、新潟県魚沼産のように有名産地や有
  • ソフトドリンクも自分好みの濃さにできます

    by 中村 滋 on 2017年9月 6日
    ウイスキーや焼酎は、水割りにしろ炭酸割りにしろ自分好みの濃さにできます。ソフトドリンクも同じようにしたいと思いますが、カルピス以外あまりみたことがありません。出来合いのペットボトル炭酸飲料は甘す
  • ぼくからみると

    by 冨樫 チト on 2017年8月30日
    お店の端っこのほうに常にあるけれどとくに光が当たることもなく手に取られ旅立っていくこともほぼない本たちのコーナーがある田島征三さんの「猫は生きている」や米倉斉加年さんの「おとなになれなかった弟たち
  • 自然派ワインの造り手「ガングランジェ」

    by 竹之内 一行 on 2017年8月24日
    フランス・パリから約500km、ドイツとの国境付近に位置するアルザス地方。この地は17世紀から19世紀にかけてフランスとドイツが領有権争いを続けていたため、フランスに属したりドイツに属したりを繰り
  • ヨコハマ トリエンナーレ2017とヴェネ...

    by 石黒 健治 on 2017年8月17日
     3年に1度、世界各国からアーチストを招待して開かれる現代アートの国際展「ヨコハマ トリエンナーレ2017」が開幕した。タイトルは『島と星座とガラパゴス』―《「接続」と「孤立」をテーマに、世界
  • 農業は儲かる!

    by 金井 一浩 on 2017年8月15日
    先日、和日米会(わかこめかい)というお米に携わる人で構成されている会の定例会に参加してきました。簡単にこの会を紹介しますと、「和」は日本の心、「日」は日常、「米」は日本食文の礎という理念の下、各々
1

Homeに戻る