こんにちはトラクター・マクスくん

2016年4月25日
「こんにちはトラクター・マクスくん」

絵本を英語で言うと
何でしょうか?

 

children's book?
picture book?

それとも
art bookでしょうか?

僕が思うのは
picture book
もしくはart book
勿論
世の中の絵本のほとんどは
子どものために作られています

ではそれはイコール
子どもっぽいものでしょうか

もしそうお思いなら
是非この本と出会っていただきたいと思います

「こんにちはトラクター・マクスくん」
ビネッテシュレーダー 作
矢川澄子 訳
岩波書店

独特の色彩感覚と構図で
決して時代に流されることのない
静かで美しく
それでいて力強い絵を描く
ドイツの作家
ビネッテ・シュレーダーさん

ストーリーは
農夫のおじいさんと
同じく年老いた馬のフロリアン
そのもとに新たにやってきた赤いトラクター
マクスのお話

まず開くと
タイトルの上に
夜道を進む赤いトラクターが描かれています
おそらくこれから農夫の元へ向かうのでしょう
地面をついばむ小鳥が3羽
描かれています
ということは朝方なのかもしれません
積荷の丸太の後ろには
衝突防止の目印の赤い三角の旗が付けられています
一枚の絵の中に
これから始まる物語への予感が詰まっています
子どもは字が読めません
だから
絵を読むのです
鳥がいるね
何を食べているんだろう
!赤い旗があるね
なんでだろう
‼︎トラクターのヘッドライトがついてるね
どこへ行くんだろうね
どこから来たんだろうね
オトナにとってはストーリーはまだ始まっていないかもしれませんが
子どもにはもう物語は始まっていて
それはオトナが望むような
納得のいく起承転結ではなく
一枚の絵で語られるデキゴトなのです

オトナは
「絵を読む」という才能を
コトバを読むという能力と引き換えに
忘れてしまうのかもしれません
それは
旅先で初めて見る景色
初めて通る道でのワクワク
行きは長く感じるのに
帰りは短く感じるあの不思議な時間の伸び縮み
我々は
もう帰り道を歩いてしまっているのかもしれません
殆どのものが
知っているもの
見たことのあるものになってしまっているのかもしれません

でも
ふと立ち止まって
シュレーダーのような優れた絵本作家の作品と向き合い
先を急がず
ストーリーに急かされず
ゆっくりと一枚の絵と向き合ってみたときに
もしかしたら
朝起きてから夜寝るまでが
物凄く驚きや発見で満ち満ちていた
あの長かった1日を
取り戻せるのかもしれません

絵に込められた様々な工夫
選び抜かれたコトバ
それらとの出会いは
きっと
children's book
では収まりきらない
art bookとしての絵本の発見に
つながると思います

ビネッテシュレーダー
「こんにちはトラクターマクスくん」
全部読み終えた後
パタンと閉じた
そのとき
表紙をもう一度目にするでしょう
きっとその瞬間
フルコースの料理の後の一杯のコーヒーを飲んだかのように
あなたはこの本に満足し
満たされた気持ちになるでしょう

フランソワ・バチスト氏がご紹介しました

Profile

冨樫 チト(とがし ちと)

冨樫 チト (とがし ちと)

本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。

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