
「セシのポサダの日」
マリー・ホール・エッツ&アウロラ・ラバスティダ 作
田辺五十鈴 訳
冨山房
クリスマス
バーバパパもクリスマス
ババールもクリスマス
マドレーヌも
パディントンも
みんなみんなクリスマス
普段絵本とは関わりがない人でも
ふと手に取りたくなる
そんな素敵な本がたくさん溢れる季節
その中から一冊を選ぶのは
かなり楽しい作業
妹の名前の由来となった
「こうさぎましろのおはなし」は勿論
王道のブルーナ
「クリスマスってなあに」や
原画展も最高だったホフマン
「クリスマスのものがたり」
トールキンの
「サンタクロースからの手紙」も素敵だし
結末にあっと驚く
「ボクは知っている」なんてものもある
なにせ絵本の古本屋MAIN TENTでは
古本屋の利点を最大限に生かし
150冊ものお気に入りのクリスマス絵本を揃えてみたのだから
どの本もみな
わたしのツリーを見て!
わたしのサンタの表情はどう?
こんな結末想像出来た?
と
我も我もと自己主張してくる
そんな可愛い絵本たちの中から今回は
絵の美しさ
おはなし
どちらも目一杯愛おしい
メキシコのクリスマス絵本
「セシのポサダの日」
をご紹介
アメリカで最も名誉ある絵本の賞
コルデコット賞に輝いた名作
作者は「もりのなか」で有名なエッツとアウロラ・ラバスティダ
愛おしい理由まずはその色
アイボリーの背景をベースに
メキシコのクリスマスの日常が
黄色
赤
ピンク
オレンジ
白
茶色
黒
これらの色のみで
色鉛筆で柔らかく描かれている
特にピンクと黄色の鮮やかなこと
メキシコの花
その花からとられた染料で染められた民族衣装
花と同じ色の服
果実と同じ色のカーテン
考えてみたら当たり前なことなのだけれど
このスカートの色はあの花から採れた染料で染めたのよ
なんてことが日常としてある景色
そんな美しさに安らぐ絵
そこに胸がきゅっとなるストーリー
セシは幼稚園に通う女の子
ポサダはメキシコのクリスマス行事
庭に吊るされた
お菓子の詰まったピニャタを
みんなで目隠しをしてスイカ割りのように
バシバシ叩いて割る
一年に一度の特別なパーティー
それがポサダ
今年は初めてやってもらえることになったセシ
しかもなんと自分のピニャタで
セシのピニャタでセシのポサダをする
そのクリスマス前のわくわくする日々を
幼稚園に入りたてのちいさな女の子の目から見える世界を通して
丁寧に描いた作品
ちいさくたって
ちいさなあたまのなかでいっぱい考えている
ちいさくたって
ちいさなこころのなかでいっぱい感じている
大人の高さでしか見えない景色もあれば
子どもの高さからしか見えない景色だって当然ある
公園の池のアヒルは寒くないかと
冷たいお風呂に入ってみて悲しくなったり
沢山吊られたピニャタたちと会話したり
ちいさなこの
ちいさなこころのゆれを
豊かな観察と
鮮やかな色彩で描いた傑作
ラストの思わず本から目をはなし
夜空を見上げたくなる展開のあたたかさまで
文句なしの
メキシコのクリスマスのおはなし
「セシとポサダの日」
フランソワ・バチスト氏がご紹介いたしました