自然派ワインの造り手
「ローラン・サイヤール」

2018年1月23日
自然派ワインの造り手 ローラン・サイヤール

パリから南西にTGVで約1時間程のところにトゥールという街がある。ロワール渓谷地域の城を訪れる観光客に拠点としても多く人達が訪れる。大学も多くあり大学街としても有名。そのトゥールの街の東からロワール川の支流にあたるシェール川を左岸に沿って60kmほど進むと、トゥーレーヌワインの老舗クロロッシュ・ブランシュの敷地が現れる。 この敷地内でローラン・サイヤールという寡黙な男がナチュラルワインを造っている。

ローラン・サイヤールは1991年、20歳の時にリヨンにあるポール・ボキューズの専門学校でホテル・レストランのマネージメントを3年間学んだ。以前から海外で働きたいと思っていた彼は、専門学校を卒業後1年の徴兵を経て、1995年新天地ニューヨークへと旅立つ。ニューヨークでは、ブルックリンにあるレストランThe Bountyで3年働き、1998年マンハッタンにあるビストロBalthazarで5年間ホールマネージャとして働いた。この頃、ブルックリンで360というビストロを経営していた友人から自然派ワインを紹介され、次第にヴァンナチュールの世界にはまりこんでいく。2004年、満を持して、ニューヨークで最初に自然派ワインだけをリストにそろえたレストランICIを立ち上げる。ビオのローカルな食材と自然派ワインにこだわったレストランは瞬く間に反響を得る一方で、家庭との両立が次第にうまく行かなくなり、2008年妻にレストラン経営を譲り、ニューヨークを後にする。

BioWine_sub1フランスに戻ってからは、ティエリ・ピュズラを介してビストロL'Herbe Rougeで2週間ほど働き、その間にノエラ・モロンタンと出会う。その後はノエラ・モランタンとクロロッシュ・ブランシュの両方を手伝いながら、ゼロから畑とワインづくりを学び、2012年、ノエラから買ったブドウで仕込んだ自身初のオリジナルワインをリリースする。翌年の2013年、ノエラの畑2haを譲り受け自らのドメーヌを立ち上げる。そして、2015年クロロッシュの引退後の畑の半分4.5 haの管理を引き受け現在に至る。


彼の所有するブドウ品種は、ソービニヨンブラン、ガメイ、ピノドニスの3種類で、樹齢は30〜60年。ブドウの栽培はクロロッシュから学び、さらに独自にビオディナミも取り入れている。また、醸造はノエラから学び、彼女同様に教科書にとらわれない「フィーリング」を大切にしている。出来上がるワインを想像しながら、マセラシオンの方法、期間、醗酵、スーティラージュ、熟成方法等、全てテイスティングを通して臨機応変に対応していく。

BioWine_sub2彼のモットーは「感性を生かしたシンプルで美しい仕事」。性格的に投げやりなことが嫌いというローランは、一度仕事を始めると最後まで黙々と丁寧に作業をこなしていく。彼の仕事の姿勢は他のビニョロン達の間でも定評があり、ワイン生産者としては新人ながら、多くのビニョロンから絶大な信頼を得ている。



BioWine_sub3仕事以外の趣味はキノコ狩りと料理。季節の素材にこだわったシンプルな料理を得意とし、今はただ料理することだけでは飽き足らず、趣味が高じて、小規模ながら自分で野菜や果物、養蜂、鶏、豚などを育てながら半分自給自足のような生活を行っている。
また、彼はアメリカに住む二児の父親で、趣味以外では、数ヶ月に一度ニューヨークにとんぼ返りし、愛する息子たちと一緒に過ごすことを何よりの喜びとしている。




ワイン

●VdF ポップ 2016(ロゼ泡)

BioWine_sub4 当初は辛口のペティアン・ナチュレルをつくる予定だったが、瓶内発酵が途中で止まり18 g/L糖が残ってしまったのだが、結果的にこのほのかな甘さと優しい泡立ちのバランスが功を奏し、クライアントの評判がすこぶる良いそうだ!当初は春向けのワインとしてリリースする予定であったが、泡ができるのを待った結果、瓶熟に9ヶ月の月日がかかってしまった。彼はこのポップをデゴルジュマンできないくらい泡が少ないことからPff(プフ:ため息)と自虐的に呼んでいるが、とんでもない!香りは花やイチゴが満載でとてもキュート!味わいはキレのあるシャープな酸とほのかな甘さのバランスが絶妙で最高にまとまっている♪


●VdF ラッキー・ユー 2016(白)

BioWine_sub5 今回のラッキー・ユーにはシャルドネが40%アッサンブラージュされている!ちなみに、シャルドネはノエラ・モランタンから譲り受けたテール・ブランシュだ!ローラン自身は、シャルドネ単体のワインがあまり好みではなく、今回のワインはソーヴィニョンのシャープな感じとシャルドネのふくよかさを両方させた、クロ・デュ・テュ・ブッフのシュヴェルニー・ブラン「フリリューズ」のようなイメージを持って仕上げたようだ!ワインは限りなくピュアで、残糖はないがアタックに透明感のある甘みがあり、一見フラットにみえる味わいも、飲み込むほどに深い味が染み出てくる!なお今回からソーヴィニヨン100%のトップキュヴェBlankがリリースされるため、ラッキー・ユーは今後もソーヴィニヨン&シャルドネのアッサンブラージュで仕上げる予定だ!


●VdF ブランク 2016(白)

BioWine_sub6 畑は以前クロ・ロッシュ・ブランシュが「NO.5」というソーヴィニヨンのトップキュヴェをつくっていたヴィエーユ・ヴィーニュの区画を、2016年に2年越しで0.5 haを手にすることができた!ワイン名は最初TimeとBlankで迷ったそうだが、2年間無償で畑の管理を引き受けていたBlank(空白)と、フランス語のBlancが語源でもあり白ワインとも一致すること、そしてローランの好きなナンシー・シナトラの歌Bang Bang=Blank Blankと言葉の響きも良いことからBlankに決定したそうだ!ワインはビビッドでアタックに勢いがあり、まさに活きたワイン「ヴァン・ヴィヴァン」を感じる!高級なイメージをあえて演出するためにラベルの文字を金色にしてふざけてみたと彼は言うが・・・ラベルのイメージとワインの味わいは実にマッチしている!おふざけにしてもローランはハイセンスだ☆


●VdF ラ・ポーズ 2016(赤)

BioWine_sub7 ローラン曰く、2016年は夏の猛暑の影響で途中ブドウの成熟が止まり、その後ゆっくりブドウが完熟に向かったため、酸が落ちなかったとのこと。アルコール度数は13.5%と高いが、酸がしっかりとあるためワインに締まりがある!また、pHの値が低く、酸化の心配がないとの判断で、今回はSO2無添加で仕上げている!前年は熟成に木桶タンクを使ったが、今回は50%古樽、そしてフレッシュさを出すために50%ファイバータンを使用!ワインは、フランボワーズやクランベリーなどを想像させるようなジューシーな果実味があり、同時にストラクチャーもはっきりしている!今飲んでも十分に美味しいが、彼の理想としてはあと数年寝かせて欲しいそうだ!


●VdF スカーレット 2016(赤)

BioWine_sub8 2016年は100%ピノドニス!前年はピノドニスの際立つスパイシーさを控えめにすることと、ポテンシャルを補うためガメイを1/3ほど足して調和をとったが、今回はローランの満足の行くブドウが収穫できたということで、ガメイを入れず単一品種にこだわった!醸造もフレッシュな果実味を活かすために、樽を使わずファイバータンクで発酵&熟成!彼曰く、赤でも酸がしっかりとあるので、トマトを使った肉料理もしくはマグロなどの赤身の魚と相性が良いとのこと!


●VdF ジョイフル 2016(赤)

BioWine_sub9 2016年はブドウがきれいだったことからSO2無添加で仕上げている!収穫日は前年と比べて3週間遅い10月15日だった。ローラン曰く、猛暑の影響で夏の間はブドウの成熟にブレーキがかかり、ブドウが完熟するまでに時間がかかったとのこと。ブドウの完熟を待った甲斐があって、アルコール度数が11.5%にもかかわらず味わいがしっかりとしている!それでいて、ワインはやわらかく果実味が喉に染み入るような感じがとても心地よい!


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Profile

竹之内 一行(たけのうち かずゆき)

竹之内 一行 (たけのうち かずゆき)

1968年10月生まれ 神奈川県出身。横浜商業高校卒後、レストラン&バーでの修業、
1993年約3週間ヨーロッパへ食べ歩きの旅行をきっかけにワインに興味をもつ。
1996年日本ソムリエ協会ワインアドバイザー修得。その後も都内ワインスクールにてテイスティングの勉強を重ねる。2000年再度渡仏の際に教科書やワインスクールでは、知ることができなかった自然派ワインや地元でしか流通していない真のお宝ワインがあることに興味を持ちはじめ毎年渡仏し現地生産者等と交流を深める。現在、父親が始めた酒販店「エスポアしんかわ」代表。都内等ワイン飲食店にワインの卸や初心者のためのワイン講座等も行っている。

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