自然派ワインの造り手
「ル・トン・デ・スリーズ」

2016年12月22日
自然派ワインの造り手 「ル・トン・デ・スリーズ」

ワインはその土地を表すというが造り手の個性も表す。これほどワインと造り手の個性がリンクしたワインがあるのかと思わせる蔵がある。「ル・トン・デ・スリーズ」だ。
東ドイツ出身という異色の経歴を持つ造り手アクセル・プリュファー。自然と音楽をこよなく愛する彼は、非常に柔らかい物腰と、優しいまなざしの男。そんな彼の人柄と瓜二つなのが、彼の手がけるル トン デ スリーズのワインたち。太陽照りつける南フランスでありながら、標高の高い畑から淡くチャーミングな果実味を備えた癒し系のワインを生み出しています。このじんわりと広がる旨味とスムーズな飲み心地は、ル トン デ スリーズならではの個性なのだ。

その柔らかい人柄とゆったりとした物腰。彼のほんわかしたキャラクターは、近隣の自然派ワインの造り手たちからもとても愛されており、まだ自身の醸造所を持っていなかった2003年にはフラール ルージュのジャン=フランソワ ニックが醸造所の一部を貸してくれたり、剪定作業が遅れていた時にはル カゾ デ マイヨールのアラン カステックスやヨヨ、ドメーヌ スカラベのイザベル フレールらが手伝いに来てくれたりしたこともあります。また映画や音楽が大好きで、彼が手がけるワインの名前は、様々な映画や音楽の一節から引用されていたりもします。

経済大学に2年ほど通っていましたが、自分の望む本来の生き方とは違うのではないかと疑問を抱くようになり、バーなどで働きはじめます。その後、兵役に就くのを嫌ってキャンピングカーに乗り込み、安住の地を求めて放浪します。そして行き着いたのがフランス ラングドック地方。この地で彼は、ヤン ロエル、ジャン=フランソワ ニック、エリック ピュフェリン(ラングロール)と出会い、彼らからワイン造りの手法とそれにかける情熱を学び、自らもヴィニュロン(ブドウ・ワイン生産者)となりました。

ル トン ド スリーズのワインを産する畑は、南フランス ラングドック地方のベダリューという街からすこし山を登った森の中にあります。ラングドック地方といえば、果実味の凝縮した力強いタイプのワインが一般的に造られるエリアですが、ル トン ド スリーズの畑の多くは標高の高い山間にあり、比較的涼しい気候と乾燥した風によってみずみずしさと清涼感のある味わいを備えたワインとなります。畑でのブドウ栽培においては、除草剤や殺虫剤、化学肥料を用いない自然な栽培を行い、醸造に関しては自然酵母による発酵にはじまり人為的な介入を避けたシンプルな方法で醸造を行っています。

BioWine_sub3そのシンプルな手法で造られた彼のワインを口にすると、淡く優しい果実味とスムーズな飲み心地があり、「これは本当に南フランスのワインなのだろうか」と思えるほどチャーミングな魅力に溢れています。アクセル プリュファー自身の素朴でほがらかな人柄がピュアにあらわれた、癒しを感じさせてくれるワインとなっています。



ワイン

BioWine_sub4 ●アン パ ド コテ2015
「一歩、横に」という結婚式の際にも使われる言葉で、忠誠を意味する。人が為すことを一歩離れ、客観的に見つめ直すというアクセルの冷静な想いが込められた名前のワイン。トップキュヴェであるランドマン キ シャントゥの区画のブドウを含むグルナッシュ100%で造られています。香水を思わせるような鮮やかで妖艶な香りに濃密な赤系果実の香りが加わり、期待感たっぷりのアロマ。味わいからは、しっかりとした骨格と密度の高い、果実の旨味があり、余韻にはローストの浅い、フルーティーなコーヒーのようなエキゾチックなニュアンスも感じられます。現時点でもフォーカスのしっかり定まったバランスの良い味わいではありますが、ぎっちりと芯に詰まった果実のニュアンスからは、今後どんどんと進化していきそうな途方も無いポテンシャルの高さが感じられます。
グルナッシュ 100%


BioWine_sub5 ●フ デュ ロワ2015
フ デュ ロワは、中世に王に仕え、世の中で起こっている事を進言する側近の意味。淡い色調と鮮やかな赤い果実の香り、じんわり広がる滋味深い旨味が特徴で、2014年と同傾向のスタイルですが、緩さのあった2014年と比較すると芯にある果実味がしっかり詰まっていて、淡く、柔らかい味わいにも関わらず骨格を感じるポテンシャルがあります。余韻にはどこか野生のハーブを思わせるいきいきとした風味があり、非常に高い完成度です!
グルナッシュ、カリニャン、サンソー


BioWine_sub6 ●ラ プール ド ルージュ2015
「赤が怖い」と名付けられな白ワイン、ラ プール ド ルージュは、今年は使用される品種が変わりまして、シャルドネ、クレレット、テレブレが用いられています。小さな白い野花を思わせるような可憐でほんのり蜜のニュアンスを感じさせてくれる香りがあり、味わいには、香ばしさとコク、ほんのりハーブを思わせる苦味があり、余韻にチャーミングな果実味がふわりと広がります。シンプルなようでいて奥ゆかしさもあり、和美人のような趣ある美味しさ。
シャルドネ、クレレット、テレブレ

Profile

竹之内 一行(たけのうち かずゆき)

竹之内 一行 (たけのうち かずゆき)

1968年10月生まれ 神奈川県出身。横浜商業高校卒後、レストラン&バーでの修業、
1993年約3週間ヨーロッパへ食べ歩きの旅行をきっかけにワインに興味をもつ。
1996年日本ソムリエ協会ワインアドバイザー修得。その後も都内ワインスクールにてテイスティングの勉強を重ねる。2000年再度渡仏の際に教科書やワインスクールでは、知ることができなかった自然派ワインや地元でしか流通していない真のお宝ワインがあることに興味を持ちはじめ毎年渡仏し現地生産者等と交流を深める。現在、父親が始めた酒販店「エスポアしんかわ」代表。都内等ワイン飲食店にワインの卸や初心者のためのワイン講座等も行っている。

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