風評被害を考える

2017年7月15日
風評被害を考える

昨年の東京都知事選挙。新しく就任した小池都知事が議会の承認を得ないまま独断で豊洲移転延期を決断してしまいました。築地市場の豊洲移転が「風評被害」というマッチポンプ商法でメディアに煽ら、安全なのに安心じゃないと意味不明なことを言い出した小池都知事、タイミングを見計らって豊洲移転を謳い、都議会議員選挙で一元代表性に収まったというなんとも違和感を覚えた選挙戦が終わったのはついこの間。

さてその「風評被害」は「盛土問題」から始まったと思います。しかしこれは豊洲市場の開場後に起こりうる不具合や施設メンテナンスを見越しての空間対策なのに、あたかも問題ありと知事やメディアが面白おかしく伝え、国民の不安心理を掻き立てました。そのとき代表的に扱われた物質がベンゼンです。地下水に発ガン性があるとされ、除染しないまま移転は危険だという不安ロジックを作り上げ「風評被害」を捻出、まんまと都民ならず国民も洗脳させられたことだと思います。

一方、復興作業が続いている東北、震災による爪あとはいまだ癒されていません。その中で「風評被害」に苦しんでいるのが福島県。津波により福島第一原発の電源が喪失し原子炉が爆発、それに伴い高濃度の放射性物質が拡散され、セシウムという物質がクローズアップされました。原子力という人間の手で到底コントロールできない技術で、セシウムという目に見えない放射性物質は実態が分からないため不安心理を煽り復興の進展状況を阻んでいます。

カイワレ大根や狂牛病の時を思い起こしても、これらに共通することは科学的見地で安全と証明されたとしても、一旦不安心理が根付くと防衛本能によって「風評被害」を拡大させ、容易には拭えなくなります。そして関係団体や企業は経営的に打撃を受け、回復が難しくなります。

ここで忘れがちなのが自然界の中に色んな物質があり、私たちは日々その影響を良くも悪くも受けていることです。
放射性物質は飛行機に乗ると地上にいるより多く浴びてしまいますし、日本は特にカドミュウムや水銀といったすでに土壌に存在する環境ホルモンが多く含まれているといわれています。これ以外に体に影響を及ぼす物質はたくさんありますが、私たちは知らず知らずに汚染物質を微量でも摂取しています。加工食品に至っても人工的な添加物は避けられません。しかし一昔前の公害事件のような社会的災害はないものの、ある程度の安全は担保されていると思います。そして100%クリーンな環境を求めた結果、自己免疫力が低下しアレルギーという新たな疾患が生まれていることも軽視できません。

福島県は日本の中でも有数の米所でした。会津産のお米は新潟県産より質が高いといわれ幅広い人が美味しいと感じるお米の生産地です。それが今では低価格で取引され、ほとんどが業務用として消化されます。外国の方には東北産すべてが敬遠される始末です。福島県産は放射性物質検査を30kg米袋ごとに行い検査証明シールが必ず貼ってあります、日本の中で唯一検査されている安全米として出荷されていても風評被害はいまだになくなりません。事故現場より距離がある会津産でも農産物の価格が震災前には戻っていません。
これは事故直後の政府、報道のあり方が原因で必要以上に国民を混迷させ不安心理を増幅させた結果だと思います。

風評被害は情報発信の方法次第で深層心理に根付く度合いが変ってくると思います。原子力災害という未知の事故によって福島県の農産物に不安を覚えるのは仕方の無い事だと思いますが、豊洲に関しては無い傷を作り意図的に傷口を広げさせた敬意は罪深い行為のように思います。情報は鵜呑みにしないリテラシーを育むことが大切だとしみじみ思いました。

Profile

金井一浩(かない かずひろ)

金井一浩(かないかずひろ)

吉祥寺生まれ吉祥寺育ち。
高校卒業後、大学に進学せず1990年証券会社へ入社しバブル崩壊を肌で経験。阪神淡路大震災の時に感じた利益優先のマーケットに疑問を感じこの年に退社。フリーター業で生計を立てるも、規制緩和の時代変化に対応できていない実家の米屋に危機感を覚え家業を継ぐことに。その後、お客さんに目が向いていないお米業界の古い体質や流通から脱するために1年半の通信教育を経て業界で一番難しいといされる「お米アドバイザー」を取得、後に第1回環境社会検定試験に合格し、フード&ヘルス研究所主催の小児食生活アドバイザーに認定される。単に美味しさだけではなく環境や健康も考えた生活の中のお米選びをお客様に提案し提供している。現在では本業の他に業界の若い世代が集まる「和日米会」の会長を務め、「フリースクール上田学園」にて日本食文化の講師を担当する。

  • くまくんのじてんしゃ

    by 冨樫 チト on 2017年7月24日
    「くまくんのじてんしゃ」エミリー・ウォレン・マクラウド 文デイビッド・マクフェイル 絵アリス館読書感想文の季節ですね苦手だった方たくさんいるでしょう何せまず感動しなきゃなりませんからそして僕も私も
  • 風評被害を考える

    by 金井 一浩 on 2017年7月15日
    昨年の東京都知事選挙。新しく就任した小池都知事が議会の承認を得ないまま独断で豊洲移転延期を決断してしまいました。築地市場の豊洲移転が「風評被害」というマッチポンプ商法でメディアに煽ら、安全なのに
  • アルチンボルドの楽しみ方

    by 石黒 健治 on 2017年7月11日
     アルチンボルドって、聞き慣れない変な名前ですが、意外に日本人に身近に親しまれている画家なんです。気がつけば、筆者がいま使っているノートの表紙が彼の代表作[夏」、裏表紙が[冬]でした! 何しろ
  • 「本を読む為のマグカップ」とは

    by 中村 滋 on 2017年7月 3日
    世界の有名ブランドが集まる最大店舗という銀座シックスに行ってきました。といってもファッションブランドに興味があるわけではなく、雑貨・バラエティーフロアを見たあと銀座・蔦屋書店へ。 ここはTSUTA
  • 自然派ワインの造り手「レ・カプリアード」

    by 竹之内 一行 on 2017年6月29日
    真面目な性格なパスカル・ポテールと陽気なモーズ・ガドゥッシュがタッグを組んで造るこだわりの発泡性ワイン! 地理 ロワールの古城で有名なシュノンソー城に程近いモントリシャーという町付近にパスカル
  • せかいのひとびと

    by 冨樫 チト on 2017年6月22日
    本屋をやっているとたまにこんなことを言われる「絵本ってなぜこんなにサイズがバラバラなんですか?」明確な答えが見つからないまま2年が過ぎたある日ふと思ったこじつけかも知れないが少しお時間を頂きたい
  • スマホ vs デジタルカメラ

    by 石黒 健治 on 2017年6月19日
     人はなぜ写真を撮るのか。フランスの精神科医で映像評論家のG・ティスロンは、「思い出を、とりあえずカメラという箱の中へ投げ込んでおく。あとで取り出して見るための行為」だといいます。しかし、いまや
  • 自然の物を独占していいのだろうか? 種子...

    by 金井 一浩 on 2017年6月15日
    種子の権利が民間へ開放されます。これによりこれから始まるであろう主要穀物種の利権争いに経済的にも健康的にも一番の被害を受けるのは消費者です。ワイドショーと化している国会質疑の影でしれっと通過して
  • スポーツブランドの機能性アロハシャツ

    by 中村 滋 on 2017年6月 5日
    もうすぐアロハシャツの季節がやってきます。アロハシャツはもともと日本の着物を利用したものなので、シルクかその代用品のレーヨンが多く、有名ブランドはそのどちらかです。ハワイのような乾燥している風土で
  • 花を棲みかに

    by 冨樫 チト on 2017年5月30日
    個人的な意見だが僕がしあわせだったなと思うのは何か読みたい本ある?と親に言われなかったことかなとふと思った本屋に行って読みたい本を選びましょうと言われた記憶はないし選んだ本をそれはあなたにはまだ早
  • 自然派ワインの造り手「パスカル&ジャッ...

    by 竹之内 一行 on 2017年5月22日
    お茶目で陽気なジャッキーおじさん! ここのワインは安い!旨い!!自然!!!の3拍子揃ったワインだ! この三つが揃ったワインは世界でもなかなか見つからない! 歴史 1966年よりワイン造りを
  • 人生を変える1枚? 人生をかけた20点!

    by 石黒 健治 on 2017年5月18日
     ゴールデン・ウイークはいかがでしたか? 全国的には天候異変があったようですが、東京地方はおおむね晴れ、何処も人出が多く、公園では芝生に寝転ぶ一家団らんの情景が展開していました。  しかし、心
  • 来る平成30年に問題が!?

    by 金井 一浩 on 2017年5月15日
    あまり報じられていないニュースに「平成30年減反政策廃止」があります。 "減反政策"と言われても馴染みが薄いと思いますので簡単に説明いたしますと、政府がお米の需要供給バランスを調整し、余剰米の生
  • シニア向け機能性チョコレート大増殖

    by 中村 滋 on 2017年5月 2日
    機能性チョコレートが流行っているらしいです。トクホとか機能性食品とかは効果が疑わしいといわれていますが、チョコレートはまあ、おいしいので+サプリ気分で食べられます。中でも乳酸菌、ビフィズス菌などの大
  • 夢ってなんだろう

    by 冨樫 チト on 2017年4月24日
    「夢ってなんだろう」村瀬学 文杉浦範茂 絵福音館書店 小さい頃の夢は「夢」を録画するビデオを発明することだった 今朝見た夢がどうしても思い出せない何だか凄く変わった夢でほぅそんなタイプの夢もある
  • 自然派ワインの造り手「クロ・デ・ジャール...

    by 竹之内 on 2017年4月19日
    南フランスのラングドック地方ミネルヴォワ地区のコーヌ・ミネルヴォワ村にヴィヴァン・エメルズダエルという若手醸造家がいる。1990年に、ヴィヴィアンの両親がミネルヴォワのブドウ畑を購入した。本業とは
  • 主役ではないけど主食です

    by ROLLEINAR on 2017年4月15日
    日本の主食は、と聞かれれば「お米」と当り前のように答えると思います。では他の国の主食はいったい何になるのでしょうか。そもそも主食という概念はあるのでしょうか。 実はヨーロッパでは肉もパンにも主
  • 伝統か? 統合か?【フュージョン料理の真...

    by 石黒 健治 on 2017年4月12日
     三田健義さんは、イタリアレストランのシェフの時代から、なかなか納得できない疑問を持っていた。  世界各国の料理を合わせたフュージョン料理が台頭していた。それは無国籍料理とも多国籍料理とも呼ばれ
  • 日本では、桜は観るだけでなく様々

    by 中村 滋 on 2017年4月 3日
    桜がそろそろです。我が日本では観て宴を開くだけでなく、歌から街の飾りから桜餅、道明寺までまさに満開になりますが、こんな職人芸「飴細工」もあります。「飴細工」は注文をその場で作る実演が売り物で、大昔
  • だれのおうちかな?

    by 冨樫 チト on 2017年3月28日
    「だれのおうちかな?」 作 ジョージ・メンドーサ 絵 ドリス・スミス 訳 福原洋子 あ!これはあれだ 小さい頃出会っていたら夢中になっていたやつだ 一目見ただけでそうピンとくる そんな作
1

Homeに戻る