新潟のコシヒカリはコシヒカリじゃない!? 第4回

2014年3月28日
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多くの品種改良したお米は、先祖帰りや品質の劣化など、徐々に形質が変化していく傾向にあります。しかし「コシヒカリ」に関してはそれを感じません。米穀業界では「腐ってもコシヒカリ」という言葉があるくらい品質の劣化がない優良種とされています。しかしその「コシヒカリ」は、稲が倒れやすく「いもち」という病気になりやすい栽培上の欠点があります。デビューした当時は味より収穫量を重視する時代でしたから、農家は収穫量が上がらないお米は敬遠します。

ところが時代が高度成長期になると「量」より「質」が求められます。そうすると全国を席巻するように味が良くて高値で取引される「コシヒカリ」の生産量が自然と増えます。中でも1日の寒暖差が大きく、丈が低く育ち、肥沃な環境を持ち「コシヒカリ」の長所に最適な生産地がありました。有名な新潟県魚沼地区です。皮肉にも、中山間地で棚田が多く大量生産に不向きな場所だったからこそ「コシヒカリ」を多収穫せずに美味しいとされるお米が栽培されていたのです。

全国では質の向上に努め様々な栽培方法が生み出されていきます。ただこまった事が起こりました。コシヒカリの生産に適し味もいいと評判になっていた新潟県産のコシヒカリを偽装した他県産玄米が流通し始めたのです。新潟県産と謳うだけで他県との価格差が2割以上ありましたから、少しでも高く売ろうとした農家や業者、小売が偽装行為を行いました。魚沼産に限っては、生産量に対して3倍以上の量が市場に出回っていたといわれています。食糧管理法の下で国に管理されていたお米は本来自由に売買できないはずなのですが、ヤミ米として出回っていました。

しかし経済発展と共に日本人の食生活は欧米食化に向かい、お米が大量に余るようになると食糧管理法も規制緩和され、お米の取引が自由になります。今では産地直送米が当たり前に認識されるようになりました。
さらに、不正を防止するためのJAS法やトレサビリティー法などの法律も強化され、中身と違う表示は罰則が設けられるようになります。遺伝子検査技術も可能になりました。その頃、新潟県では平成17年、戻し交配という技術で「BLコシヒカリ」が誕生します。BLとはBlast Resistance Lines(ブラスト レジスタンス ラインズ)の略で、「いもち病」という低温時に発生しやすい稲の病気に対して「異なる抵抗性を持つコシヒカリ」を意味しています。ただこれは表向きで、他県産との差別化のために遺伝子で見分けられるしるしをつけるためだと、業界内で話題になりました。

実は、現在新潟で栽培されているほとんどの「コシヒカリ」は厳密には「BLコシヒカリ」なのです。表記ではBL表示しなくてもいいとされています。流通用の30kg米袋には記載されていますが、精米販売で「BLコシヒカリ」の表記義務はありません。味はどうなのだと言われると、そこまで厳密に差の分かる人はいないと思います。何が違うのか私が聞きたいくらい。ただ、やはり栽培している農家さんに聞くと、BLは作りにくいといった声が聞こえてきます。

さてそんな「コシヒカリ」、脱コシヒカリとささやかれ、各県では品種改良が盛んに行われ「ゆめぴりか」「つや姫」などがデビューしています。次回そんな品種の運命を大胆にも占って行きます。

Profile

金井一浩(かない かずひろ)

金井一浩(かないかずひろ)

吉祥寺生まれ吉祥寺育ち。
高校卒業後、大学に進学せず1990年証券会社へ入社しバブル崩壊を肌で経験。阪神淡路大震災の時に感じた利益優先のマーケットに疑問を感じこの年に退社。フリーター業で生計を立てるも、規制緩和の時代変化に対応できていない実家の米屋に危機感を覚え家業を継ぐことに。その後、お客さんに目が向いていないお米業界の古い体質や流通から脱するために1年半の通信教育を経て業界で一番難しいといされる「お米アドバイザー」を取得、後に第1回環境社会検定試験に合格し、フード&ヘルス研究所主催の小児食生活アドバイザーに認定される。単に美味しさだけではなく環境や健康も考えた生活の中のお米選びをお客様に提案し提供している。現在では本業の他に業界の若い世代が集まる「和日米会」の会長を務め、「フリースクール上田学園」にて日本食文化の講師を担当する。

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