絵本とビートミュージック

2020年10月28日
絵本とビートミュージック

ビートのお話
太鼓を叩くとドンと音が鳴る
もう一度叩くとまたドンと音がなる
このドンがビートなのだが
僕ら踊り手が大切にするのは
そのドンとドンのあいだ
太鼓を叩く手が振り上げられている
その「すきまのじかん」だったりする
絵本がビートだとしたら
ドンは開かれたページだろうか
そこにある絵と
ページをめくるとあらわれる
次の絵
その間のことを
最近考えていた
思い浮かんだのは2人の絵本作家
『はしれかもつたちのぎょうれつ』で知られるドナルド・クリューズと
『よかったねネッドくん』が傑作なレミィ・シャーリップ

シャーリップは絵本作家であると同時に、役所、舞台演出、振付けもこなします。
まず彼の脳内が覗けるのは、作品集のような絵本、『ARM IN ARM』
言葉と絵を使い、遊べる限り遊び倒した悔しくなるような一冊。

絵本とビートミュージック

1957年の『Where is Everybody?』
では、定点観察された一つの景色に
少しずつ色々なものたちが描き込まれ
やがてやってくる雨により
また全てが隠れてゆく。
学芸会サイズの舞台を体育館でパイプ椅子に座って観ているような、不思議な作品。
ページを横切る川の水面、これが舞台の前っつら、へりの部分となり
その高さはページをどれだけめくっても変わらない。
その上を、時に下を、大道具や登場人物たちが動く。
絵本を一つの舞台として捉えていて、ページをめくってもめくっても同じリズムが刻まれています。

絵本とビートミュージック

同じ手法は名作、『いたずらこねこ』でも使われていて

絵本とビートミュージック

こちらの舞台のへりは、庭の芝生。
ページに芝生の線が真っ直ぐ横切り
上手には木の柵。
これが袖幕となり、こねこはこちらから登場。
下手には亀の住むちいさな池。
この舞台で物語は進行します。
(幼稚園の学芸会でやるには丁度よい作品だと思うのですが...)
いずれもページとページを1本の線が繋げていて、日常の穏やかなリズムを刻んでいるとても素敵な絵本です。
逆にページとページの間
ビートとビートの間を、ドキドキして止まる呼吸や、そして〜という「ため」で繋ぐのが
人気作『よかったねネッドくん』
こちらはページをめくる毎に色彩も、場面も、シチュエーションも変わるので
子どもたちはわーきゃー言いながら夢中になります。
(読み聞かせの際の子どもの反応、ということを主体に考えると、『いたずらこねこ』よりも『ネッドくん』のほうがよい絵本であるように思えてしまうのが、難しいところですね。)
『ちいさなとりよ』
については以前こちらに書かせて頂きました。

http://hesse-web.com/dennentoshi/book/entry-779.html
シャーリップのページとページの間の繋ぎ方は、音楽的にもとても好きだな
と思います。
因みにネッドくんは、音楽に置き換えるなら
JURRASSIC5の名曲
"SWING SET"ですね。

https://youtu.be/7HUSl7bmIIs

さて、ドナルド・クリューズ
こちらはもはや、作品自体がほぼ音楽。
日本でも人気の『はしれかもつたちのぎょうれつ』に関してもまた、こちらに以前書かせて頂きました。

http://hesse-web.com/musashino/book/entry-811.html
最近入荷したこちらがまた、素晴らしいのです。

CAROUSEL

『CAROUSEL』
何のことはない、開店木馬が回り出して、やがて止まる。
ただそれだけなのにこの格好よさ。
空の木馬がスタンバイし
オルガンの準備が整い
人々が乗り
音楽が鳴り
馬が放たれ
上下し
回り
どんどん早くなり!
音楽はけたたましく鳴り響き!

やがて
全てはゆっくりともとに戻り
また
空の木馬が佇む
彼の作品は常に、読み終えたあとの静寂までを含めて、一冊の絵本となっています。
例えばライブで、曲終わり!拍手!
という間ではなく
例え最後のシンバルが空気中に吸い込まれ
完全に消える
その後に湧いてくる拍手
それが彼の絵本。
ビートとは
太鼓がドンと鳴ったその瞬間ではなく
それが消えてゆくまで
そこまでが一つのビートだから
瞬間瞬間のポージングではなく
その間までしっかり捉えて動くのだ
そう師に言われた言葉を思い出しつつ
2人の絵本作家の間をご紹介致しました。

Profile

冨樫 チト(とがし ちと)

冨樫 チト (とがし ちと)

本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。

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