すみ鬼にげた

2019年2月26日
「すみ鬼にげた」

ながいながい旅に出てボロボロで帰りつき
ふと窓から外に目をやると
実は探していた伝説の花は
我が家の庭に咲いていた
なんて物語や
この人が私の運命の王子様
とあこがれのサッカー部の先輩を追いかけていたが
実は本当の運命の人は隣にいていつも悩みをきいてくれていたあいつだった
なんて少女漫画

それと同じように
面白い絵本はないか
面白い絵本はないかと絶版になった絵本をひたすら漁り
海を渡り遥々買い付けの旅に行ったりしたが
実は本当に面白い絵本は
自分の店の均一棚に何気ない顔でささっていた
なんてことがあったりするのだ
今回はそんな一冊

「すみ鬼にげた」
岩城範枝 作
松村公嗣 絵
福音館

この本は面白い
いつもご紹介するような珍しい本ではない
今でもちゃんと売っていて
節分の際や
高学年の学級文庫などにもよく並べられている本だ
(フェアというのは大体イベントの前に行われるが、特に鬼の本などは、節分のあと。鬼ってなんだ?何故豆をぶつけられなければならない?逃げた鬼はどこへ行くの?など、子どもたちの中にきっと生まれるであろう疑問に答える形でひらかれてもよいのではないかと思う。)
個人的な感想で申し訳ないが
表紙がなかなか地味なのでパッと手にとられやすくはない
本の中から鬼が出て来ようとしている図案なのだが
その左手のながーい爪が
タイトルの「げ」の字の上にかかっていたり
濁点を弾き飛ばしていたりしたら面白いのにな
と思う
ちょっと古い昔話
というイメージだが
どっこい中身はちっとも古くない
スターウォーズの最新作を見るくらいのフレッシュでドラマチックな今の感覚で存分に楽しめる展開が待ちかまえている
さて
すみ鬼とは一体何か
種類としては持国天やら増長天やら
立派な仏像の足元で踏ん付けられて苦しそうにしている邪鬼の一種
唐招提寺の金堂
その軒下の四隅にて屋根を1200年以上支え続けている四体の鬼である
つまり外来の鬼だ
(余談。ディズニーシーの大きな白い船SSコロンビア号
その中にあるバー
テディ・ルーズヴェルト・ラウンジのカウンターの上で
天井を支えている4頭の熊をご存知だろうか?
1頭だけシャケを咥えていて
それをヨダレをたらしながら見ている他の熊が最高なのだが
さしずめ彼らはすみ鬼ならぬすみ熊なのだろう)
唐から日本へ
どれ、日本の鬼たちと勝負するかとやって来たものの
船の上で鑑真和尚に見つかり捕らえ
すみ鬼となった
四体のうち三体は諦めてすみ鬼として固まってしまったものの
残りの一体の鬼は諦めきれず機会を伺っていた
そして
ある満月の晩に
ついに、そのチャンスは訪れる
逃げ出した鬼は吉野の山奥で日本の馬頭の鬼と大盛り上がりの力比べをし
朝を迎えるが
そこで...!
あとは是非本を読んで頂きたい
ご期待は裏切らないはず

先程わかりやすいスターウォーズで例えたが
スターウォーズと同じ
少年の成長があり
圧倒的な力と力のぶつかり合いがあり
善と悪の葛藤があり
異形の者たちの不思議な魅力もあり
そして切なさもある
グイグイと引き込んでくれる作品だ
鬼が闇夜と呼応しながら発する台詞を最後にご紹介
「人間どもは けっして、闇を見ようとせぬからな。おまえたち人間に 見えているのは、この世の半分。残りの半分は、わしらのものだ」
どうです?
読みたくなりませんか?
今月の絵本
面白い本は実はすぐ身近に
「すみ鬼にげた」
フランソワ・バチスト氏がご紹介致しました
因みに奈良
唐招提寺の金堂に今もその鬼はおります
四体全てを見れば
どれがその鬼なのかはすぐわかります
双眼鏡片手にどうぞ

Profile

冨樫 チト(とがし ちと)

冨樫 チト (とがし ちと)

本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
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