せかいのひとびと

2017年6月22日
「せかいのひとびと」

本屋をやっていると
たまにこんなことを言われる
「絵本ってなぜこんなにサイズがバラバラなんですか?」

明確な答えが見つからないまま2年が過ぎたある日
ふと思った
こじつけかも知れないが
少しお時間を頂きたい

きっかけは隣のビルのお店
OUTBOUNDの小林さんと話していたときだ
小学校の入学式に参加した小林さん
校長先生の話を聞きながら思ったらしい
明るく、元気よく、友だちと仲良く
それは勿論とても大切なことだが
ここに集まったそれぞれが異なる人間で
異なる個性を持っている
その違い、多様性を尊重しましょう
みたいなことにも触れて欲しいな
そんな話をしていた

僕の頭の中に一つの絵本が浮かんだ

ピーター・スピア
「せかいのひとびと」
評論社

その名のとおり
世界には多種多様な人々がいて
髪の色が違えば目の色も違うということを
スピアの丁寧な絵でセンスよく描いた名作

1ページに56個ずらりと並ぶ横顔
ほら
鼻の形を比べてごらん
こんなに色々ある!
勿論肌の色も違うし耳の形も
あ、この人はピアスを開けている
あ、この人の耳は尖っている
みんな違う
すごい
よく見たらみんな違う
色々な服を着ている人がいるし
勿論何も着ていない人だっている
きみの当たり前はあの人にとってはすごく新鮮なことかもしれない
(でも生まれたときはみんなはだかんぼ
みんな同じ)

みんな楽しいことが大好きだけれど
同じことで笑う人もいれば
泣く人もいる
みんなでいるのが好きな人もいれば
1人でいるのが好きな人だっている
一枚一枚の絵
添えられる短い文章
ページを繰る毎に
自分の当たり前がぺりぺりとキャベツみたいにむかれていく
そんな本

例えば小学校
今日体育館の入学式に集まった一年生たち
みんな一年生
みんなおなじ○○小学校の一年生
でもぐるりを見回してごらん
背の大きいひともいる
背の小さなひともいる
みんな違う
生まれたときはみんなおっぱい飲んでいた
でもきっといま
肉が好きな子もいれば
魚が大好きな子もいる
ピーマンなんて見るのもいや!ってこもいれば
好物はピーマンの肉詰め!ってこもきっといる
みんな同じで
みんな違う
楽しいね

そう
例えば本棚の絵本たち
しまうの大変なんだよなぁ
なんで同じサイズじゃないんだろ
なんて大人のぶつぶつをよそに
自由自在なカタチの絵本たち
大きさも違う
厚さも違う
色も匂いもそれぞれ違う
(違いは...受け止めればいい
うちの本棚は
一番大きい本「ねこのオーランドー」のサイズで作ってある
だから
どんな大きな本ものびのびと収まる
もちろん小さな本だって居心地が良さそうだ
色も形もバラバラ
もちろん中の物語だってみんな違う)
大きい本が小さい本より面白い
なんてこともない

「せかいのひとびと」

そう
なんでオトナが形や大きさを一緒にしたいかって
整理しやすいからなんだ
そのほうがわかりやすくて便利だからね
ひとまとめにしやすい
紐でだってぎゅっとくくれる
小さい箱にだって詰め込める
ところがどっこい
絵本はそうはいかない
まとめようとしたってちっともうまくいかない
これはどう考えたって
まとめられないためにこうなっているに違いない!

本の一文にこんなものがある
「ある人たちは自分と違っているというだけでよその人たちをきらう。そんなことっておかしいよ。その人たちは自分たちだって他の人から見ればちがっているってことを忘れているんだ」

2週間前に娘が生まれた
生まれた瞬間から
この子は他の誰とも違うんだ
この子はこの子以外の何者でもないんだ
と思って
愛おしくて愛おしくてたまらなくなった

もしかしたら
絵本のサイズがバラバラなのは
この世にうまれてきた子どもたちに
みんな同じじゃなくてよいんだよ
違っていいんだよ
違うって
こんな楽しくて
美しいんだよって
そんなメッセージかもしれない

ピータースピア
「せかいのひとびと」
フランソワ・バチスト氏がご紹介いたしました

Profile

冨樫 チト(とがし ちと)

冨樫 チト (とがし ちと)

本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。

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