夢ってなんだろう

2017年4月24日
「夢ってなんだろう」

「夢ってなんだろう」
村瀬学 文
杉浦範茂 絵
福音館書店

小さい頃の夢は
「夢」を録画するビデオを発明することだった

今朝見た夢が
どうしても思い出せない
何だか凄く変わった夢で
ほぅそんなタイプの夢もあるんだ!
よし
これは朝食の時に妻に話そう
(食事のときの会話が好きで、見たこと聞いたこと発見したことなどはそこまでためていたりする)
と思って目を開けると妻は妻で
「頑張った頑張った。あなたはよく頑張ったよ」
と寝ぼけながら僕の頭をなでている

とりあえず起こしてどうしたのか尋ねてみる

どうやら僕の演出した舞台で
ダンサーがかなり大事なきっかけをミスしたらしい
しかも後半になると
隣に座っていた人や周りの人たちがわらわらステージに上がって行き
実はお客さんだと思っていた人達はほぼ出演者で
実際のお客さんはわずか数人だったという

なんてこったいと一笑いし
さあ今度は自分のあの面白い夢を語る番だ
と思った時にはもう
自分が見た夢の内容はすっかり忘れてしまっていた

きっと皆さんも同じだろうが
小さい頃からこういうことはしょっちゅうあった
凄く面白い夢を見た
凄く悲しい夢を見た
夢の中で画期的な発明をした
だが目覚めて思い出そうとした瞬間
何かの魔法のように記憶が消えてしまう
温度というか匂いというか
その夢の雰囲気や感情だけはしっかり覚えているものの
肝心の内容はスコンと抜けてしまっている

小さい頃の夢は
「夢」を録画するビデオを発明することだった

現実と非現実の間
この2つの世界の間にあるのが
例えば本だと思う

現実世界から非現実世界を覗く扉
それが本だとしたら
夢はその逆で
寝ている間に非現実世界から現実世界にどわっと勝手に流れ混んで来て
頭の中をいっぱいにする
そして目覚めと同時に扉から向こうの世界へ引き上げてしまう
たまに運良く部屋に転がっていた彼らの忘れ物や
扉に挟まったシーツの先っぽを頼りに
昼間の時間に夢の記憶を引き戻すことは出来るものの
あの夢の部屋の生々しい感覚は帰ってこない

絵本屋がこんなことを言ってはいけないかもしれないけれど
正直
ナルニアより
ゲドより
はてしない物語より
自分が主人公で体験できる
自分の夢のほうが断然面白い
一体全体
夢ってなんだろう
夢ってなんなんだろう

この本は
そんな夢の秘密や疑問を
オトナにもコドモにもわかりやすく
夢の壺というキーワードで説明してくれる
読みやすいけど専門的な
専門的だけど読みやすい
小学生の頃の僕が読んだときも面白かったし
大人になった僕が今読んでもナルホド
と発見する
お見事な一冊だ
そして
更に素晴らしいのは
神沢利子さんのウーフには井上洋介さんの絵が正解であったり
佐藤さとるさんの物語には村上勉さんの絵が正解であるのと同じよう
この夢という不思議な世界を描くには
杉浦範茂さんの絵が間違いなく正解であること

いないいないばあ
これはのみのぴこ
木を植えた男
みみをすます
おやすみなさいおつきさま

文と絵の間に
これしかない
という結びつきが生まれたとき
時代を超越していく名作というのは誕生するのですね
80年代から読み継がれる名作
88年にはカタロニア賞受賞
村瀬学 文
杉浦範茂 絵
福音館書店
たくさんのふしぎ傑作集
「夢ってなんだろう」
フランソワバチスト氏がご紹介致しました

Profile

冨樫 チト(とがし ちと)

冨樫 チト (とがし ちと)

本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。

  • 競馬で牝馬をひんばと読みますが牡馬は?

    by 中村 滋 on 2017年12月 5日
    来年、広辞苑が10年ぶりの改訂とかで、「スマホ」とか「萌え」とかが載るということですが、これをニュースにするというのは、なんか時代とズレてませんか。辞典編集部の担当役員をした経験から言うと、辞典編
  • ぴちぴちカイサとクリスマスのひみつ

    by 冨樫 チト on 2017年11月30日
    さあ今年もホリデーシーズンがやってきたぼんやりと外の雨を眺める日々も終わり年に一度の絵本屋の張り切り時一年間ためた200冊あまりのクリスマスの絵本を一度に放流する今年はなかなか楽しい絵本を捕獲し
  • 「1968年」無数の問いの噴出の時代

    by 石黒 健治 on 2017年11月22日
    「1968年」無数の問いの噴出の時代」展が、国立歴史民俗博物館で開催されています。無数の問いとは何でしょうか。誰が何を、だれに問うのか、問いには答えがあったのか?第1の問いは、ベトナム戦争です。1
  • 美味しさの秘訣は計量

    by 金井 一浩 on 2017年11月15日
    「同じお米なのになぜ?毎回違う炊き上がり!」という経験ありませんか? ごくまれに、「前回のお米はベチャっと炊き上がり美味しくなかった」「今回のお米は粘りがすくなく感じた」このような問い合わせがあ
  • 2017年の自然派ボージョレ・ヌーヴォ...

    by 竹之内 一行 on 2017年11月13日
    2017年の作柄 6、7、8月の3か月は殆ど雨が降らなかった。 降ったのは雹だけ。しかも2度に渡って降った。 3か月も雨が降らなかったので、葡萄が熟す大切な8月は水不足で葡萄がシワシワになって
  • 街は騒音と雑音に満ちていると気づく道具

    by 中村 滋 on 2017年11月 6日
    夜道を歩いていて聴こえる虫の音も、気温のせいか小さくなっています。そんな虫や鳥、風の音は心地良い音色ですが、電車やトラック、バスのロードノイズ、バイクの排気音は騒音です。街はなんと雑音に満ちている
  • おおきなくまがいいました

    by 冨樫 チト on 2017年10月27日
    週に一度仕事で横浜に行く吉祥寺から新宿へ湘南新宿ラインに乗り換え横浜へ1時間ほどの電車の旅だボックス席に乗りながら本を読んだり携帯をいじったり周りもほぼ同じように自分の世界を過ごしている新聞であっ
  • 自然派ワインの造り手「オリヴィエ・クザン...

    by 竹之内 一行 on 2017年10月24日
    フランスのロワール地方の中にアンジュ・ソミュール地区とういワイン生産地がある。 ここでは赤はカベルネ・フラン、ガメイ、グロロ。白はシュナンブランを主に栽培されている。一般的には軽やかで安いワイン
  • 風景と調和すれば、存在が許される――安部...

    by 石黒 健治 on 2017年10月18日
     [美しい山。川を流れる石ころ。砂浜に打ち上がる流木。それらの形はとうてい人間には作り得ない必然性を持つ。]  安部大雅のパンフレットは、こんな詩的な文章から始まる。続けて、[我々人間がどこまで
  • 有機栽培は無農薬栽培なの!?

    by 金井 一浩 on 2017年10月15日
    最近、お米以外でも野菜や果樹、輸入品までJAS有機栽培の農産物を見かけます。ファーマーズマーケットのように生産者の直売イベントでは栽培表記が必須ですよね。 そこでJAS有機栽培、無農薬栽培、減農
  • あらゆる臭いが瞬時に消える不思議な液体

    by 中村 滋 on 2017年10月 4日
    体臭をやたら気にするのはどうかと思いますが、悪臭というのはいっぱいあります。靴箱、クローゼット、トイレ、生ゴミ、焼き魚あとの台所、エアコン、寝室、ペット、車の中などなど。 消臭といえばファブリーズが
  • 自然派ワインの造り手「ミッシェル・ガイ...

    by 竹之内 一行 on 2017年9月26日
    自然派ワインファンが大注目の産地の一つにジュラ地方がある。 フランスとスイスの国境に近い山岳地帯にありコンテやモン・ドールなど素晴らしいチーズの名産地でもある。この地は冷涼な気候とこの地独特の葡萄
  • わたしのワンピース

    by 冨樫 チト on 2017年9月21日
    噂にはきいていたがどうやら読むことと読んでもらうことは全然違うらしい自分で足をマッサージするのと誰かに足をマッサージしてもらうのが全く違うようにするとされるとでは全然違う気持ちよさがあるというこ
  • たいまつを放さない人の手をたいまつが焼く

    by 石黒 健治 on 2017年9月19日
     9月最初の月曜日、フォトコンテストの審査会に出席しました。仏教伝道協会の「2019年一日一訓カレンダー」を飾る写真の審査です。1740枚の応募の中から第1次審査を通過した385枚の写真が、大
  • 新米の価格が高騰

    by 金井 一浩 on 2017年9月15日
    いま29年産米の収穫期を迎えております。そして今年の米価は作柄に関係なく産地品種によっては2年前に比べ2割以上も高騰しています。もともとお米の価格は味に比例せず、新潟県魚沼産のように有名産地や有
  • ソフトドリンクも自分好みの濃さにできます

    by 中村 滋 on 2017年9月 6日
    ウイスキーや焼酎は、水割りにしろ炭酸割りにしろ自分好みの濃さにできます。ソフトドリンクも同じようにしたいと思いますが、カルピス以外あまりみたことがありません。出来合いのペットボトル炭酸飲料は甘す
  • ぼくからみると

    by 冨樫 チト on 2017年8月30日
    お店の端っこのほうに常にあるけれどとくに光が当たることもなく手に取られ旅立っていくこともほぼない本たちのコーナーがある田島征三さんの「猫は生きている」や米倉斉加年さんの「おとなになれなかった弟たち
  • 自然派ワインの造り手「ガングランジェ」

    by 竹之内 一行 on 2017年8月24日
    フランス・パリから約500km、ドイツとの国境付近に位置するアルザス地方。この地は17世紀から19世紀にかけてフランスとドイツが領有権争いを続けていたため、フランスに属したりドイツに属したりを繰り
  • ヨコハマ トリエンナーレ2017とヴェネ...

    by 石黒 健治 on 2017年8月17日
     3年に1度、世界各国からアーチストを招待して開かれる現代アートの国際展「ヨコハマ トリエンナーレ2017」が開幕した。タイトルは『島と星座とガラパゴス』―《「接続」と「孤立」をテーマに、世
  • 農業は儲かる!

    by 金井 一浩 on 2017年8月15日
    先日、和日米会(わかこめかい)というお米に携わる人で構成されている会の定例会に参加してきました。簡単にこの会を紹介しますと、「和」は日本の心、「日」は日常、「米」は日本食文の礎という理念の下、各々
1

Homeに戻る