いえのなかを外へつれだしたおじいさん

2020年2月26日
「いえのなかを外へつれだしたおじいさん」

アーノルド・ローベル 作
奥田継夫 訳
アリス館

ご存知の通り
絵本の古本屋MAIN TENTはごちゃごちゃしている
お店には4000を超える絵本が所狭しとひしめきあい
床には太鼓が1.2.3.4...5個!
ライオンが寝そべり、亀が這う
ちょいと目を上げればロウソクを持った猿が3匹
鳥は1.2.3.4...数えきれないや
大きなラッパの間を機関車だって走っている
壁から首だけ覗いた熊までいる
ごちゃごちゃのめちゃくちゃだ

「いえのなかを外へつれだしたおじいさん」

もちろん最初からこうだったわけではない
ほら
ご覧のとおり

「いえのなかを外へつれだしたおじいさん」

ただの空っぽの空間
MAIN TENTなんてカッコつけた名前もついていない
ただの「フェリオ吉祥寺の102号室」だった

ここがまた空っぽになっちまったらどうしよう
想像するだけで怖くて
ベッドで毛布をかぶって震えたくなる
ところが
ベルウッドじいさんの家の中は
ある日本当にみんな出て行ってしまった
家出しちまったんだ
なんでそうなったかって?
それはある日の朝

いつものようにじいさんは家の中を隅々まで掃除する
ピアノやら額縁やら
みんなを心から愛していたので
丁寧に丁寧に拭く
絵をよく見ると、時計は7時
で、庭に出て朝の光をゆっくりと楽しむ
でも、その日じいさんは考えちゃったんだ
大好きな家の中たちも、外に出て楽しみたいんじゃないかと
絵をよく見ると時間は11時
最初は順調さ
「森をぬけ、野原をよこぎり」町を通り過ぎ
じいさんと家の中たちは愉快に散歩を楽しんだんだ
絵をよく見ると時間は16時
ところが夕方になると
家の中たちは自由の味を覚えてしまった
あんな狭い家の中にまた戻るかって
そんなのごめんと、じいさんを振り切って
勝手に走り去ってしまった
ついた先は浜辺
家の中たちはそれぞれ思い思いに
月の光が降り注ぐ夜の海を楽しむ
大量のお皿が波で泳ぐ姿
それを並んで眺めるカトラリーたち
こんな光景はマザーグースのあの詩でもおよびっこない
岩陰でかくれんぼしている柱時計をよく見ると
時間はもう夜の23時
さて、一方のおじいさん
空っぽの部屋でくる日もくる日も家の中の帰りを待ちます
一年たった冬のある日
遠くから音楽が...

ここから先は読んでのお楽しみ
つまりこの作者の言いたいことは
自由とは...
物を大切にして...
愛とは...
なーんてこと1ミリも気にしなくてよいのが
絵本
あー面白かった
とか
あんまり好きじゃないな
とか
この絵のブルーベリー美味しそうだな
とか
おじいさんのひげはキスしたらいたいだろうな
とか
自由気ままに楽しんで下さい
『がまくんとかえるくん』の
あの温度が好きな方は
きっと気に入りますよ
個人的には、ラストシーンのおじいさんのうやうやしいお辞儀に
ぐっと来ます
静かで
賑やかな絵本
『いえのなかを外へつれだしたおじいさん』
フランソワ・バチスト氏がご紹介致しました。

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