たらばがにのはる

2019年4月24日
「たらばがにのはる」

「たらばがにのはる」
あんどうみきお さく
おのきがく え
福音館書店
1970年


春が来たな
と感じるタイミングは
きっと人によって違って
誰かにとっては部屋の窓を開けたときであったり
また違う誰かにとっては
散歩中に桜の蕾が膨らむのを見つけたときであったり
ふふふんと鼻唄を歌いながら自転車を漕ぐお爺ちゃんとすれ違ったときであったり
日なたで寝そべる犬の毛がゆるやかにそよぐのを見たときだったり
それはそれぞれに
一年にたった一度しか訪れない
特別な瞬間

僕にとって今年は
井の頭公園でサンドイッチを頬張っていたとき
池の水はキラキラ輝き
その上をアヒルボートが泳ぎ
遠くに桜が咲き
パンの間から溢れ落ちたアボカドを
目敏いアリが発見していました

そして
こちらは北国の海
暗く静かで、冬と春の違いなどまるでないような海の底にいた
たらばがにのお母さんにとっても
その日は特別
こんな何の変化もないような海の底でも
ちゃんと春の気配は感じられるのです
そう
春になったら
おなかにかかえたたまごを生むため
浅いところに引っ越さねばなりません
隣の奥さんと
甲羅の脱ぎ変えもしなきゃよね
そんな話しをしていたとき...
いつの間にか忍び寄ってきた水ダコがあっという間に隣の奥さんをさらって行きます
一瞬の出来事
一瞬の油断
なんと恐ろしい
たった一ページの出来事
ページをめくればまたもとの静かな海
ページを戻れば穏やかなカニの談笑
ほんのわずかな油断も許されない自然界の厳しさ
けれどもその恐ろしい水ダコのなんと美しいこと
水彩絵の具の紫、青、緑、仄かにえんじ
点描で淡く、雨の日の街の光のようにボワッと
それでいてゴムのように素早くしなやかに伸びる足
序盤のいきなりの展開に
ドキドキします
さて
タラバガニの夫婦は浅い海まで上がって来て
産卵、そして甲羅の脱ぎ変えという大仕事に取り掛かります
産卵はもちろん一大事ですが
実は甲羅の脱ぎ変えは更に命がけ
というのも脱ぎたての甲羅は柔らかく
小魚のほんのわずかな攻撃にすら耐えられないくらいなのです
まずはおとうさんガニが守り
おかあさんガニが脱ぎ変えます
案の定無防備で柔らかいカニを狙ってタラが四方から寄って来ます
実はこのおとうさん
浅瀬に行くときに泥の中でのんびりしていて遅れて合流したり
美味しそうに貝を頬張ったりと
かなりゆったりしているのですが
やるときはやります
両方のハサミを振り回し
おかあさんガニを守り抜きます
戦い疲れヘトヘトになった頃に今度は交代
おかあさんガニがハサミをふりふり
おとうさんガニを守る番です
こうしてタラバガニの夫婦は春の大仕事
産卵と甲羅の脱ぎ変えを終え
深い海の底へ戻って行くのです
めでたしめでたし
その夫婦の最後の会話が
春らしくてなんともよいのですが
それは読んでのお楽しみ

そういえば
桜の鉢植えには
花が終わると肥料をあげなければなりません
花を咲かすには
ものすごいエネルギーを使うのです
近所の小学校の角で
おかあさんに無言でぎゅっとしがみついてから
校門に向かう黄色い帽子を今朝見ました

人も含め
変化を迎える忙しい季節
心の栄養に
美しく生命力に溢れた絵本をどうぞ
春の一冊
「たらばがにのはる」
フランソワ・バチスト氏がご紹介致しました

【中国・朝鮮半島と日本】 関谷興人さんの "悼み"

2019年4月11日
【中国・朝鮮半島と日本】 関谷興人さんの 「悼み」

韓国は好きだ。行きたいけど、このところどうもね、行ってイヤな思いをしそうだから、と言う人が多い。筆者もその一人だ。まず従軍慰安婦像だ。ソウルでもプサンでも行けば目にすることになる。考えただけでいたたまれない。さらに最近は強制徴用工の像も建てられているらしい。関連日本企業の韓国内資産の差し押さえも始まった。今後、北朝鮮が加われば、

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【中国・朝鮮半島と日本】 関谷興人さんの "悼み"

記事提供:社団法人東京都トラック協会

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