今回は、全国の飲食店などを中心に、車椅子やベビーカー利用者、障がい者、お年寄りが出かけやすい環境をつくるための活動を行っている、NPO法人「ココロのバリアフリー計画」の代表・池田 君江さんにお話を伺いました。
地域の人
池田君江さん
2007年6月に発生した渋谷温泉施設爆発事故に巻き込まれ、脊髄を損傷。車椅子生活を余儀なくされる。自身の生活体験を通し、2012年に「ココロのバリアフリー」WEBサイトを立ち上げる。
――まずは、このWEBサイト「ココロのバリアフリー」を立ち上げたきっかけを教えてください。
私は7年前の事故が原因で、車椅子で生活するようになりました。当時は少し外出するだけでも怖くて、どうしても引きこもりがちになっていたんでが、リハビリ中に脊髄損傷専門のトレーナーに出会ったことをきっかけに、一歩ずつ外に出てみるようになりました。
「車椅子でも入れますか?」と問い合わせると入店を断られることも多いのですが、そんな中、私を歓迎してくれたのが「串カツ田中」一号店のスタッフの皆さん。このお店は当時、店内がバリアフリーになっているわけではありませんでした。でも逆にスタッフの方が「どう介助したらいいか教えて欲しい」と言ってくれて、全員が協力して私をサポートしてくれたんです。
――2つの大きな「出会い」があったのですね。
そうですね。このお店では、入店時にスタッフの方が車椅子を持ちあげてくれたり、通路を通るときに周りのお客様に声をかけてくれたり。おかげで、「串カツ田中」は私にとってとても居心地のいいお店になりました。このように、店内が「バリアフリーかどうか」ということではなく、迎えてくれる側の人たちの意識や理解、協力体制、そしてコミュニケーションを取れることが何よりも大切。それが「ココロのバリアフリー」につながると思います。こうしたお店の情報をもっと発信し、外出しやすい環境をつくっていきたいと思い、WEBサイトを立ち上げることにしたのです。
――このWEBサイトには、どんな情報が掲載されているのですか?
このサイトに掲載されている店舗は、決して完璧にバリアフリーが整っているところばかりではありません。載せているのは基本的に「今現在の情報」です。入口に段差があるかどうか、入口幅が何センチあるか、エレベーターがあるか、トイレに手すりがあるかどうかなど...。こうした情報は、これまでどこにも掲載されていなかったんですよね。
――あくまでも「今現在の情報」が必要だということですね。
そうです。例えばあまり知られていませんが、車椅子のサイズは人によって全く違います。ですから、「車椅子の人は誰も入れない」という認識は誤りで、入口の幅や段差の有無さえわかれば、当人は自分がそこに入れるかどうかすぐにわかるのです。車椅子が入れるトイレがなくても、近くにコンビニや病院などがあればそこを利用することもできますし、1~2段の段差なら、同伴者がいればクリアできることもありますから。
――登録している店舗にはどんなところがありますか?
現在は飲食店がメインです。中には「スタッフが全員アメフト部出身なので、どんなに重い車椅子でもかつぎます!」と書いてくださっているところもありますよ(笑)そういう形で、現状の「できること」「できないこと」を発信してほしいと思います。今すぐお店をバリアフリーに改装するのは無理でも、そうした発信は、迎える側の心ひとつでできることだと思います。
――今後はどのような活動を展開されていく予定ですか?
2013年10月にNPO法人を立ち上げましたので、全国での登録店数1000店舗を目指して、今後も活動を続けていきます。今は飲食店が中心ですが、美容や他の施設などにも広げていきたいと考えています。
現在、日本全国で車椅子の方は180万人、障がいを持った方は500万人いると言われています。そういった方たちが肩身の狭い思いをするのではなく、ごく当たり前に出かけられるような社会をつくっていきたいですね。